ぬいぐるみと見る夢

かなちょろ

 ぬいぐるみと見る夢

 僕はキリンのジョン。 チカちゃんのベッドにいつもいる。

 そう僕はチカちゃんのぬいぐるみなんだ。

 今日もチカちゃんと一緒にお布団で眠る。

 一緒に眠ると僕はチカちゃんと夢の世界で冒険出来るんだ!


 今日のチカちゃんの夢はなにかな?

 今日のチカちゃんは楽しそうにベッドまでやって来て、僕にお話をする。


「ジョン知ってる? 明日はお父さんが帰ってくる日なの」


 笑顔で話すチカちゃんはとても嬉しそう。

 今夜の夢はチカちゃんのお父さんが帰って来て、僕の背中に乗り、お父さんと一緒に公園に行ったり、買い物に行ったりする楽しい夢。

  次の日の朝は、チカちゃんは早起きしてパジャマから着替える。


「ジョン、昨日はとっても楽しい夢をみたわ。 今日帰ってくるお父さんと遊ぶのが楽しみ!」

 

 とても嬉しそうに僕に話しかけて部屋を出て行った。

 しばらくしたら下の部屋からチカちゃんの楽しそうな声が聞こえてきたよ。

 お父さんが帰ってきたみたいだ。

 そしてその夜、今日の出来事を僕に話してくれた。


「お父さんね、しばらくいられるんだって! 嬉しい!」


 一日お父さんと沢山遊んだチカちゃんは、寝る前に大好きなお父さんに絵本を読んでもらって今日は眠りについた。

 今日の夢はお父さんと動物達の遊園地へ遊びに行っている夢。

 ゾウさんが風船を配り、ウマのメリーゴーランドにも乗った。

 鳥さん達と空を飛び、色々な動物達のパレード。

 とっても楽しそう。


 こんな楽しい日々が続いたけど、お父さんが仕事に戻る日がやってきた。

 下の部屋からはチカちゃんが泣いている声が聞こえる。

 そしてベッドで僕に話してくれた。


「明日ね、お父さんがまた帰っちゃうの。 チカね、凄く寂しいの」


 チカちゃんが眠るまでお父さんに手を繋いでもらって眠りについた。

 でも今日の夢は楽しい夢ではなかったよ。

 お父さんはチカちゃんにバイバイをして歩き出す。

 僕の背中に乗っているチカちゃんはお父さんを引き留めようとするが、お父さんはどんどん先に進んでしまう。

 泣きながら引き留めるチカちゃんのために、僕が頑張らないと!


 僕はチカちゃんを乗せて走ったよ。 お父さんに少しでも近づけるように。

 でもどんどん進んでしまうお父さん。

 負けないぞ!

 僕は力一杯走った。

 糸の継ぎ目が破れ出したけど、チカちゃんのために走った。

 でもお父さんには追いつかない。

 諦めてかけたその時、動物の遊園地の動物達が駆けつけてくれた。


「僕たちも力を貸すよ」


 動物さん達が一生懸命に僕の糸の継ぎ目を直してくれたんだ。

 これでお父さんを追いかけられるぞ!


 僕はまた頑張って走った。

 お父さんに追いつくために。

 お父さんが見えてきた! あと少しだ!

 あと少しの所で大きな崖に阻まれた。

 お父さんは崖の向こうを歩いている。

 

 僕は助走をつけて崖を飛び越そうとジャンプした。

 でも向こう岸まで届かない。

 落ちていく中で僕はチカちゃんの力になれない事が悔しいと思ったその時、なんと僕の背中に翼が生えたんだ!

 動物達の遊園地で動物さん達がつけてくれていたみたい。


 今度こそ頑張るぞ!

 僕はチカちゃんを乗せ、全力で羽ばたいた!

 お父さんだ! あとちょっと!

 僕はチカちゃんをお父さんの前に下ろすと、チカちゃんは大好きなお父さんに抱きついた。

 それはとても良い笑顔だった。


 お父さんが仕事で帰ってしまった日、チカちゃんは僕に言う。


「ジョン、またチカをお父さんの所まで連れて行ってね」


 僕はぬいぐるみだ。 動く事は出来ない。

 でも夢の中なら僕はいつだってチカちゃんの力になるよ。

 そして月日が経ち、今僕はチカちゃんのベッドにはいない。

 僕はチカちゃんの部屋の棚の上にいる。

 チカちゃんがつけてくれた翼を付けて……。

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