第16話

颯により無惨に散らされた『散り桜』。


 重要文化財の価値が、一気に落ちていく。真っ白なシーツに無数の花弁を描きながら。



「は、はや....て、お....ねがい、キスして....」


「惟、惟っ─────」



 背中に流れる赤をも厭わず、2人は互いの呼吸を絡め取るようなキスを交わした。







 颯の罪は、器物損壊罪、文化財保護法違反、そして、人身傷害罪。


 占めて懲役7年の刑に処されることとなる。



 惟の自由と引き換えに。



 その後二人がどうなったかは、"彼"の作品に込めた想いが示してくれるものだと、"彼"自身願うのだった。




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『散り桜』



 一本の老木から散りゆく赤い花弁が、


今風と共に自由を求めて飛び立つ。



作:吟鳴


  

 



(了)

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無情の知、けせらせら 由汰のらん @YUNTAYUE

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