第8話 魔族すくすくのびーる幼稚園 入園試練
俺は突然変異で最強の力を持って生まれた息子と娘のために朝食を作る。それが1日の始まりで今日も早起きすると俺は鶏の唐揚げを作っていた。子が起きる前に料理を終わらせないと、まだ幼い息子と娘は拗ねてサンダーボールⅡの魔法を俺に向かって発動するから恐ろしい。殺されないためにも、そして親としての自覚を持って俺はせっせと料理に励む。最強の我が子の育児は大変だ。
俺の妻は魔物のオーク。名前はピンクと魔物らしくない可愛らしい名前。だが昨夜のこと。娘のペラは、
「ゴンブーおにーちゃーん、頭にハエが止まってましゅよ」
そう言ってファイアーボールの魔法をハエに向かってぶっ放した。すぐさま辺りに、
”ドドーンッ”
と爆裂音が響き渡った。息子の兄ゴンブーは怒って
「痛いよ、ペラ。このやろー!」
そう言って妹のペラに向かてサンダーボールⅡの魔法を放ち、
”ズドーン”
という雷鳴が辺りを支配した。するとペラの側にいた妻のピンクは子供の兄妹喧嘩に巻き込まれて即死。ゴンブーは経験値を獲得してレベルアップし、1100になった。
その騒ぎに驚き、
「いったい何が起こったんだ!」
と10匹のゴブリン兵がやって来た。
どさくさに紛れて俺もそのゴブリン目掛けて、
「ファイアボール!!」
と叫んで魔法を連射した。ゴブリン兵は全滅して俺のバイクロが”ピコピコーン”となり
★★★★★★★★★★★★★★
48の経験値を得た。
レベルアップ+1 レベル31
★★★★★★★★★★★★★★
と表示された。思わず俺は、
「やったー!! レベルが上がったぞー!!」
とそこら辺をぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。俺の側にいた我が子たちも、
「やったねパパ!」
と言ってハイタッチをしてきた。そう、俺ら家族は味方を容赦なく殺して強くなるあほファミリー。
ある日、俺は子供たちの教育のため、2人を魔族すくすくのびーる幼稚園へ入園させることにした。すくすくのびーる幼稚園に入るには面接を受ける必要がある。俺は子供たちを連れて面接を受けさせようと幼稚園へやって来た。
すくすくのびーる幼稚園には、ゴブリン、オーク、ガーコイル、ゴーレムなど、800匹の魔物の園児が100の教室に別れてにこにことを楽しそうに遊んでいる。それを見た俺は、きっと俺の子もあの子たちのようにおりこうさんになるな、と期待感が体中から溢れ出して笑みを浮かべた。
俺と子供たちは面接室へと通された。すると面接官の女性のラビット教員が、
「ようこそ、すくすくのびーる幼稚園へ。ではさっそく面接を行います」
「よろしくお願いします」
少し緊張して俺は顔をしかめて返答した。そして面接が始まってラビット教員が、
「初めの試練です。お父さん、ビール10万杯を3分以内に飲み干してください」
と言ってバカでかい
「何だって!! 何で俺がそんなことをしなければならないんだ!!」
「子は親の遺伝子を受け継いで生まれてきます。親は子の鏡。親の能力テストです」
「この試練を受けた者はいるのか?」
「昨日、この試練を受けたゴブリンパパが樽2万を飲んで死にました」
「何だと! 俺も死ぬかもしれないぞ!」
「今試練を辞退するとあなたはペナルティとしてレベルが1になります」
「そんなバカな面接があるか!!」
「どうしますか?」
俺はしばらく腕を組んで考えた。今やめるとせっかく苦労して上げたレベルが1になる、仕方なく俺は、
「試練を受けます」
と死を覚悟で決意した。
ラビット教員はストップウォッチを手にし、
「3、2、1、はじめー!」
いよいよ試練は始まった。俺は狂ったようにどんどん樽を持ち上げてビールを飲みだす。息子と娘は側で、
「じゃんけんポン、あっちむいてほい」
と楽しそうに遊んでいるありさま。俺はそれを横目に見て、俺の子はこんなにも親の苦労を知らないのか、と情けない気持ちが湧いてくる。それでも俺は親の意地を見せるのだ、と躍起になった。そして樽7万杯目で、
「うえー、うえー」
と嘔吐した。ラビット教員は大笑いしながら俺を見ている。それで俺は、すくすくのびーる幼稚園の職員はこれほどまでに冷酷なのか、と思う。更にラビット教員は、
「残り30秒ー、29、28、27……」
容赦なく俺の精神力を低下させる。だが可愛い我が子の為にと再び狂ったように樽を持ち上げた。残りの樽の数は減っていき、後、2万、1万、そして残りの1万まで来るとラストスパートをかけた。そしてついに
「飲み干したぞー!!」
俺は口から泡を吐きながらラビット教員に告げた。するとラビット教員は、
「第一試練突破です!」
すると娘のペラは、
「パパ、おめでとう!! これプレゼントよ」
にこにこしながらビール30万樽を俺に差し出した。そこまで俺を殺したいのか、と思うが、俺はありがたくいただいた。不機嫌な顔をすれば娘は拗ねてファイアーボールⅡの魔法を連発しそうで恐ろしい。だから泡を吹きながら俺は無理やり笑うしかない。
ラビット教員は容赦なく、
「次の試練です。タバコ3000万本を3分以内で吸いなさい」
「何なんだ、この面接は!!」
「今辞退するとペナルティとしてあなたは魔王様に食べられます」
「この試練を受けた者はいるのか?」
俺は目の前のウサギ教員を睨みつけながら聞いた。すると教員は、
「2日前、ゴーレムパパが急性肺がんで死にました」
「マジかよ!!」
ラビット教員は俺に考える間を与えずに、
「どうしますか? 辞退しますか?」
「受けます!」
俺は今日で死ぬな、とそう思う。すぐさまラビット教員はまたストップウォッチを手にし、
「3、2、1、スタート!」
死の試練が始まった。タバコに火を点けるのは何とマッチだった。俺はひたすらにマッチをこすって火を点けた。そして横目で側にいる子供たちを見ると、
「せっせせーのよいよいよい、おちゃらかおちゃらかほい!」
と笑ってじゃれあっている。俺は悲しい。寂しい。それでも親心を忘れるな、と体にムチを打ってひたすらにタバコを吸い続けた。するとタバコ2000万本を吸ったところで、
「おほっ、おほっ、うえー」
とまた嘔吐し、俺は母ちゃんの幻覚が見えてきた。ラビット教員は容赦なく、
「残り30秒ー、29、28、27……」
ストップウォッチを手にしながら笑うウサギの魔物教員。それで俺は怒りがこみ上げ、闘争心に火が付いた。残り1000万本のタバコをまとめて口にするとマッチで火を点けて一気に吸った。そして、
「吸い終わったぞー!! ごほっ、ごほっ」
俺の精神状態は破壊されていた。ラビット教員は、
「クリアーです!!」
すると息子のゴンブーが、
「パパ、おめでとう!! はいプレゼントだよ」
そう言ってタバコ10000万本を俺に差し出した。この息子は本当に俺の子か、と疑ってしまう。それでも俺は笑って受け取った。そして死んだ妻ピンクの亡霊が見えるような錯覚を感じた。
ラビット教員は、
「見事試練突破です。ボーナス経験値3000ポイントゲット」
するとバイクロを見ると、
★★★★★★★★★★★★★★
レベルアップ+10 レベル41
忍耐力+500
ミラクルファイアー 取得!!
★★★★★★★★★★★★★★
と表示された。俺は息を切らしながら喜んで飛び跳ねた。だが、もうこんなクソ面接はごめんだ、と思う俺。
面接は合格し、俺の子供たちは魔族すくすくのびーる幼稚園の園児となったのだ。
転移して魔族軍に入り、家族は味方殺しで魔王様を……! 岡本蒼 @okamotoao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転移して魔族軍に入り、家族は味方殺しで魔王様を……! の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます