第7話 魔王の即死

 連合軍VS魔族軍の第二戦は互いに多くの兵を失った、と言うよりも両軍全滅と言っていい。それは突然変異で生まれた俺の息子天才児ゴンブーの魔力暴走が原因だった。

 だがしかし、俺たち魔族軍は大陸南部を無事支配下におさめることに成功した。



 ウィスター卿は自分が一番苦手とする仕事を今回も迎えていた。それは戦後に行う魔王ガーベージ陛下への戦況結果の報告だ。いつものようにウェーブの魔法でガーベージ陛下に取り次ぐと、


「陛下、大陸南部の制圧に成功しましたが、軍は全滅です」


 またしてもウィスターは謝罪した。


「何だと! まあ兵はザブリーを生殖体にして幾らでも増やせる故、問題はない。だがウィスター卿よ、どうしていつも兵士がこれほどまでに減るのだ?」


「すみません、何と言ってよいのか……私の不服といたすところです」


「まあ大陸南部の制圧は称賛に値する。ご苦労だった。よし、またアレを実行せよ」


「兵力増増兵策のことですね?」


「さようだ。ザブリーは魔族の兵力の源。奴をまた使うのだ」


「畏まりました。早速種付けを行います」




 多くの女子おなごの魔族と俺はウィスターに授かりの間へと呼び出された。俺は、また体内から液を取る気だな、そう思った。


「ウィスター様、ご用件は?」


「裸になれ」


「え! やはりまたですかー。毎回液を取られたら俺は将来種なしになりますよー!」


「黙れ。皆の者、ザブリーを真っ裸にして寝室へ連行しろ!」


 あの時と同じように俺は麻酔銃を撃たれて寝かされ、体内から精子を抽出された。そして前回とは違い、侍従医師は、


「よし、今回はザブリーの体内に毒を混入させ、毒耐性を強化しておこう」




 数時間後、俺の分身が次々と産まれてくる。その数3万。そして今回もまた侍従医師は、


「何とまた突然変異の子だぞ、しかも女子だ!!」


 産まれた赤子にはすぐさま魔族ワクチンが打たれ、元気に育つ。俺は嫌な予感がした。



「父ちゃーん、初めまして」


「な、何なんだ。お前の名は?」


「444号よー、私は女の子よー父ちゃん」


 それを見ていたウィスターは、


「はははっ! ザブリーよ。お前の液はどうやら質がいいらしいな。444号もゴンブーと同じ突然変異で産まれてきた天才魔族兵。既にレベル80だ」


「なにー!! ゴンブーでもまだレベル70だぞー!!」


 余りのアホらしさに俺は大笑いしかできない。その一部始終を部屋の陰で見ていたゴンブーが姿を現すと、


「わーい、おにーちゃーん!!」


「444号ー!!」


 二人はサンダーボールⅡの投げ合いっ子をすると、となりにいた侍従医師は即死した。


「やめなさい、2人とも!」


 俺は18歳にして2児の父親となり、残りの人生が思いやられる。すると444号が、


「父ちゃん、お腹空いたでしゅ。おっぱい、おっぱい!!」


「何だって、父ちゃんはおっぱいが出ない生き物なんだよー、444号ちゃん」


 それを聞いた444号は機嫌を損ね、ミラクルファイアーを何度も放って俺を殺そうとする。


「分かった、分かった。おっぱいだね。いい子だから5分待てるかなー?」


 俺が仕方なくそう言うと444号は、


「わーい、わーい」


 と喜びながら口から炎を吐き、15メートル離れたオーク兵を丸焼きにした。それを見たゴンブーは、


「わーい、肉の丸焼きだー!」


 そう言ってオーク兵を一飲みにした。もう俺は確実に育児ノイローゼに陥っていた。俺は自分の症状を残ったもう一人の侍従医師に告げると安定剤が処方された。そしてウィスターに今後の育児について相談することにした。5分以内でおっぱいを準備しないとまた444号は何をしでかすか分からない。時間がないのだ。


「ウィスター様、俺はどうすればおっぱいがでるようになりますか?」


 するとウィスターは変態を見るように俺を横目で見た。


「ザブリー。だいぶ頭が病んでいるようだな。お前は男だろ、おっぱいなど出るわけない」


「じゃあ、444号に何を食べさせるのですか?」


「正式に魔族の女子をめとれ。そして新妻にお願いしておっぱいを444号に飲ませば問題なし」


 俺はその言葉を聞いて今度はうつ病を発症し、抗うつ剤が処方された。そして俺はあまりの辛さに大量服薬をして自殺を試みたのだ。



 2日後、俺が意識を取り戻すと女子のオーク兵が444号におっぱいをあげていた。するとウィスターが、


「気が付いたかザブリー。おめでとう。このオークがお前の新妻だ。おっぱいの心配は解決したぞ。喜ぶがいい」


「なにー!! 勝手に入籍かー!!」


 すると444号におっぱいをあげていたオークが、


「あなたー、私の名前はピンクです。死ぬまで私を愛してね♡!!」


 その後、あまりのショックで俺はまた自殺を決意し、近くにあったナイフで手首を切り、意識不明。





 それからまた2日後、意識を取り戻した俺の右手は改造された機械仕掛けの手になっていた。そして444号は、


「父ちゃん、素敵なお手手でしゅね」


 あげくの果てにゴンブーは、


「パパの右手、とってもおいしかったよー!」


 何と、手術で切断された俺の手をゴンブーが食べてしまったと聞かされた。


 それで俺は妄想と幻覚を発症し、魔族精神病院に入院する羽目になった。


 面会に来た新妻のピンクが、


「あなたのキスが欲しいわー」


 そう言ってピンクは俺に不気味な顔を近づけてきた。俺は今、元の世界に帰って母ちゃんに会って泣きたいと思った。次第にピンクの顔が近づいてきたとき、伝令兵がやって来て、


「一大事です。魔王、ガーベージ陛下が444号とゴンブーの手により即死」


 すると444号とゴンブーのレベルは一気に上がり、999に達した。


 魔族軍は混乱したが、一番混乱したのは俺の頭の中だ。我が子の息子と娘が魔王を即死させたのだから。そんな悩み事をしていると444号がやってきて、


「父ちゃん、おにーちゃんが私をスーパーミラクルファイアーでいじめるのよー、おにーちゃんをパチしてー」


 そこへゴンブーも現れ、


「パパー、この手、おいしいよー」


 と言って殺した魔王の右手を俺に差し出した。


 侍従医師は魔族安定剤を特別に処方すると、ゴンブーにはご飯に混ぜて飲ませ、444号には液大薬を妻ピンクの乳首に塗って飲ませることに成功した。すると、我が子二人は冷静になった。ウィスターはにっこりと笑うと、


「ザブリー、君の子は素晴らしい活躍をした」


「なぜですか?」


「次の魔王は私、ウィスターが就任し、名をデスペル陛下と改名する」


「ははっ、デスペル陛下」


 デスペル陛下はゴンブーと444号に飲ます魔族安定剤を大量生産するように侍従医師に命じた。




 しばらくすると俺は元気になって無事、魔族精神病院・閉鎖病棟を退院した。それから俺は妻ピンクと共に育児に追われることになる。朝、昼、晩、魔族安定剤を子に飲ますようにと侍従医師に言われ、俺とピンクはそれを忘れないように心掛けた。



 俺はデスペル陛下にあるお願いをした。


「陛下、444号の名前をペラと改名したいのですが」


「はははっ、やはり444号と呼ぶのは聞き苦しい。よかろう、今から444号はペラと呼ぶ」


「ありがとうございます」



 4日後、ゴンブーが魔族安定剤の副作用でアイスボールⅡ連続放射を起こし、1万の魔族軍が即死。侍従医師は副作用止めの薬を処方した。

 更に2日後、今度はペラが新型魔族ウイルスに感染してサンダーボールⅡ連続放射を起こし、2万の魔族が即死。すぐさま抗生剤物質薬が処方された。

 そう、俺たちは魔王も殺すアホ家族。



 俺はその後、我が子の将来を考えて教育方針を考えそうと考え始めた。

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