第4話(終)
当たり前のように、朝が来てくれた。
いつものように「おはよう」と言い合って、いつものように朝ごはんを食べる。
いつものように、それぞれがそれぞれの場所へ行くための準備をする。染みついたルーティンをこなしながら私は、探して探してようやく見つけた、サツキとの机上の空論の着地点について、思い巡らせる。
――お残し対応のための待機なのかもしれないし、単に食べる気がないのかもしれないし、お金がないのかもしれない。細かいことはわからないけど、少なくともあたしは、一人だけ食べてないのって気になる。だから、誰かと食べに行く時は、その食べ物をふたつ食べ切れるくらい腹ペコで行くことにするよ。それで、お残しがあったら、あたしがペロッと食べちゃう!
久しぶりに、サツキとのトーク画面を開く。
微笑みながら、メッセージを打ち込み、送信ボタンをタップした。
「ねぇ、ミナ」
「ん? 忘れ物はないよ! ちゃんと確認したから」
えっへん、と胸を張るミナを微笑み見る。
その顔は「どうしたの?」とでも言いそうな、不安げな表情に変わっていく。頭の上には、ハテナマークがひとつ、またひとつ浮かび上がっていく。
「また、みんなでクレープ、食べに行かない?」
想像した言葉とは異なっていたらしい。ホッとした様子で、
「行く!」と、明るい声を響かせた。
「今度は、みんなで食べよう」
「うん! じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。今日もたくさん、楽しいことがありますように」
見送り、手に取ったスマートフォンには、受信通知があった。
――久しぶり! あたしも行く! ってか、ミナちゃん見たい!
もう、一人だけ食べないだなんて言わせない。
私は過去を巻き込みながら、理想の未来へと突き進む。
―了―
空論を巻く 湖ノ上茶屋(コノウエサヤ) @konoue_saya
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