最終話

成果発表会を直前に控え、僕はKKからアカデミーを一般社団法人化することを聞かされた。これまで団体の活動に過ぎなかったものが、ついに法人化となり、一組織として生まれ変わるのだ。KKが代表理事、ダンス講師でもあるMMが副代表理事となり、僕は広報担当常任理事兼事務局長という、一般社団法人における役員の一人として就任が決まった。

成果発表会は一般来場も可能になり、そのためには入場チケットが必要だった。宣伝をしたところ、演劇の基礎を一から教えてくれた演出家のAYに久しぶりに会い、そこでチケットを渡しながら、初舞台から今日に至るまでの思い出話をした。


そして4月中旬の日曜日、成果発表会当日。開演前は僕の掛け声と共に円陣を組む。この顔ぶれの円陣は思えば初めてであった。メンバーの家族や友人たち、そしてAYなどの顔ぶれが観客席にいる中で、僕らは演劇、歌、ダンスとレッスンで学んできたものを発表。僕は演劇一本に絞り、複数の演目を掛け持ちして出演した。

5分の短劇はコントのような形式で、スイカ割りに情熱をかける役を演じる僕の演技を見て観客席から笑い声が聞こえると、初舞台の日が記憶に浮かんだ。また、その直後には10分の劇があったため演目終了後に早着替えをして、直前のコントとは180度違う、引きこもりの高校生役を演じた。初舞台から約3年、今では演劇の勝手が分かるようになっていた。

カーテンコールでは、メンバー総出演でエンディングダンスを踊った。講師陣や観客の手拍子も相まって、まさに華麗なるフィナーレであった。「本日は、ありがとうございました!」という僕の挨拶と共に、メンバー一同で深々と一礼をすると、観客席からは拍手の音が鳴り響いていた。


この10年で、僕にも周囲の人々にも様々な変化があった。まだコロナが落ち着かないが、これからも何事にも突っ走っていこうという気持ちだけはいつまでも変わらないだろう。

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男、突っ走る!(演劇奮闘篇) 壽倉雅 @sukuramiyabi113

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