マスク3枚重ねの夢鬱吊《ゆめうつつ》

マスク3枚重ね

夢鬱吊《ゆめうつつ》

あぁ痛い、苦しい、地獄だ。書かねばならない。私が忘れる前に書かねばならない。この話は私、マスク3枚重ねの夢日記。夢鬱吊ゆめうつつ私の鬱の夢…



家族や両親、親戚が次々と不幸な目にあっていく、私を中心に不幸になっていく。叔母が私の鬱を笑い、私を罵倒し、私の娘に手を挙げた。警察の仲裁が入るも厳重注意に終わる。たぶん、私が悪かった様に思う。娘を傷付けたのは許されないが、私が悪かった。従兄弟に嫌われ、責め立てられる。


「母の元に警察が来たのはお前のせいだ」


その通りなのだろう。私は耳を塞ぐ。罵詈雑言を自分の手のひらで蓋をする。だがそれでも聞こえてきた。しまいには殴る蹴るの暴力へと発展し、後ろで笑う叔母がいる。私は何故か握っている刃物で従兄弟達を切りつけた。飛び散る血液、それでも相手は止まらない。むしろ火に油で強く殴られその場に倒れ、リンチにされた。後ろで警察も笑ってた。その場に両親や兄弟が駆けつけて、私を庇い、警察にこれは事件だと抗弁垂れる。その場に来る救急車、自体は収集がつかなくなっていた。ヘラヘラ笑う警察官、怒りで我を失ってる従兄弟たち、何故か自信満々に自分の正義を等々と語る両親ふたり。包帯でグルグル巻きにされる私。何故か治療を終えて行ってしまう無表情の救急隊員。


両親ふたりに車に乗せられ、家族、父、兄弟で母の運転する車に揺られる。スピードが出ていて「危ない」と言ったらアクセルを更に踏み込む。娘を抱き締め身構える。するとサイレンが聞こえてきた。警察がスピーカーを通して喋ってる。


「そこの車止まりなさい」


舌打ちをひとつして、母は止まらない。追いかけるパトカーと無表情の家族達、震える私。すると突然、横の道からパトカーが出てきてぶつかった。シートベルトをしてなかった妹が吹き飛んだ。ヘラヘラした警官に捕まり連行される母、血の中に倒れ冷たくなる妹、それを見た父はペースメーカーの入った心臓を抑え倒れる。何故か私に怒る弟、泣きもせず、黙って立っている4歳の娘。私は頭を抱える。


「全部、パパが悪いんだよ?」


突然、焼きごてを押し付けられたような熱が後ろ脇腹に感じて振り返る。娘が笑っていた。手は赤く染まり、包丁を握っていた。私が膝を着き「何で…」と言った時に喉元にそれを突き立てられる。見下ろす娘が拙いしゃべりで救急車を呼んでいる。死んでもおかしくない傷で天を仰ぐ私、救急車のサイレンが聞こえ、無表情の救急隊員に担架で運ばれた。

治療も程々に車椅子で上からロープがぶら下がる階段前へと運ばれる。


「自分の足で登るんだ」


その声の主は誰なのか分からなかった。ボロボロ哀しみの涙を流す私、拍手喝采を贈る家族や友人、親戚一同。

よたよたと階段を登るとロープの輪っかが首にかけられる。


「最後に言いたいことはあるか?」


ヘラヘラした警察官がそう言った。それから静まりかえる人々。


「私の…人生は…」


全てを言い切る前に下の床が抜ける。一瞬の浮遊感の後に意識を失う。それと同時に私は目を覚ます。泣いていた。この歳で夢で泣いていた。夜中の3時半、隣で寝る娘の寝顔に安心しこれを書く。


おわり

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