第24話 挑戦し続けて良いですか?

──あれから、また数日が経った。



変化と言うほどのことは特にない。

マツモトは相変わらず、朝から晩までポーション精製に没頭している。

時折シュカが遊びに来て、精製したポーションを『嗤うヒツジ亭』まで持って行ってくれた。


……しかし、今のマツモトは以前と違っていた。

シュカと2人で決めた目標。そのためにひたすらポーションを精製しているのだ。

売れ行きは順調で、特にマナのポーションがよく売れるのだという。依然、流通が滞っているせいだろう。



「……47、48、49……50!」

シュカが指を折りながら、金貨を数え上げる。

最後の金貨を数え終えると、弾けるような笑顔をマツモトに向けた。


「マツモトさんっ、これで……!」

「ああ……150万レナス達成だ!」


シュカは飛び跳ねんばかりに喜んで、2人はハイタッチを交わした。

マツモトも満足感に満ちた表情で、手の上で金貨を転がしていた。



2人の目標、それは『150万レナスを貯める』こと。

必要な額だけなら100万もあれば十分なのだが、今後の生活も考慮すると、これくらいは余裕を持った方が良いという判断だった。


150万レナスの使い道は、防具の購入。そして、西の森への再挑戦である。

戦う術を持たないマツモトにとって、ゴブリンの存在は脅威だ。だが、金属製の重装備で身体を保護してしまえば、ゴブリンの原始的な武器からダメージを受けることは無くなる。

質の良い防具を買おうとすれば、それだけ出費は大きくなる。金属製の鎧なら数十万レナスは必要だ。そのための150万レナスであり、妥協して安物を買う気は一切なかった。


「……さあ、行こうか」

「はいっ! 頑張って準備しましたから、絶対うまく行きます!」


シュカは満面の笑みを向けてくれた。

彼女も空いた時間を見つけては、魔法を使う練習をしているのだという。

最近は2回魔法を使ってもバテなくなったんです、とシュカは嬉しそうに語っていた。


鞄には、大量の水とマナのポーション粉末も詰め込んでいる。

シュカがマナ欠乏症にならないよう、精製しておいたマナのポーションも大量にストックしたのだ。



今度こそブラッドベリーを手に入れてみせる。

そうしてパワフルポーションを精製して、そうしたら次は────



マツモトは、これから始まるであろう無数の挑戦に、身を震わせた。

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ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか? chocopoppo @chocopoppo

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