比翼の鳥・後日談 《将臣サイド》
(伊織…今何をしているんだろうか)
編集者から
伊織に勧められて、出版社に送った「道化」の自伝。
編集者のお眼鏡にかなったようで、思いのほか帝都の人間の受けはよかった。
続編を熱望されて、最近は帝都に足蹴なく通っている。
その間、伊織を一人部屋に残していることが気がかりだった。
◇◇◇◇
『伊織…これをやる』
寂しい思いをさせてる伊織に白い文鳥をプレゼントした。
伊織はとても喜んでその文鳥に「小雪」と名をつけていた。
『本当に一人で大丈夫か?何かあったら隣の大家に言うんだぞ』
将臣の心配をよそに、伊織はいつものように笑顔で送り出してくれた。
「寂しくないのか?……俺は寂しいぞ!!」
独り愚痴り、将臣は思わず窓の外の冬空を見上げる。
伊織も同じ空の下にいるが、とても遠くにいるように感じた。
そして将臣はある決意をした。
「よし、ひと仕事終わらせて帰る…絶対帰ってやる!」
将臣は編集者の制止を振り切って、アパートに電話を繋いだ。
「伊織か?あ…あれだ!…今日は早く帰れるから……ああ。帰ったら何処か食べにでも行くか!」
そう言うと途端に、伊織の弾んだ声が返ってきた。
彼女の嬉しそうな顔が脳裏に浮かんでくる。
そして伊織の不意打ちの言葉に将臣の思考は一瞬止まった。
ハッと我に返り、慌てて言う。
「伊織!!…お、俺も好きだよ」
将臣はそう言ったが、電話は既に切れてきた。
「……………帰るか」
比翼の鳥 甘灯 @amato100
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