心。
相手が人間であっても、その本心を見抜くことは難しい。
完璧に人間を模した機械が相手ならどうだろうか。
数値化された感情を元に再現するのは完全な心。
それでも、私たちは微かな違和感を感じ取れるはずです。
未だ、居場所すら分からない。
心という曖昧なものは、曖昧な人間にこそ宿るものなのではないでしょうか。
事故で亡くなってしまった母親の代わりとして、機械仕掛けの『レイ』は子供の『悠里』と父親の『新』と共に新しい生活を始める。
見た目から細かな仕草までを完璧に再現された機械仕掛けは母親である『玲』そっくりだった。しかし、どんなにそっくりな機械といえど、『悠里』の機敏な心を欺くのは容易ではなく……。
母親という子供にとっての絶対的存在。幼くして失くしてしまうことの辛さは計り知れないと思います。
描かれる子供と母の会話。
人間と機械の違いを文字では感じ取れませんが、幼い子供に分からないはずがありません。描かれていない『悠里』の感情までもを想像させる、機械仕掛けの出来過ぎたセリフが魅力的でした。
あくまで『レイ』は『玲』の完璧なコピー。
ただし、人間は機械のように正確ではありません。完璧な母親としての言葉回しが、かえって違和感を駆り立てるのでしょう。
機械と人間の共同生活は上手くいくのでしょうか。
迎える物語のラスト。
家族はこれからどのような決断をするのか。
是非、お確かめください。
素晴らしい作品をありがとうございました。