願いのパラドクス
@yumawey
第一節 remember
第一話①:違う自分
もしも願いが一つだけ叶うなら、何を願いますか。
ーー願いが叶うなら、俺は…
ーーーーー
やばいやばいやばい‼︎
急がないと、ほんとにマズイ。
現在時刻は7時57分。オレは見慣れた町を韋駄天の如く颯爽と駆けてゆく。
なぜオレがこんな朝から走っているのかって?それは単純なことさ。
遅刻しそうだからだ‼︎
「5日間連続で遅刻です。
「はい…ごめんなさい」
「来年はあなたも6年生なんですから。学校は勉強だけできればいいわけじゃありませんよ」
「はい、気をつけます」
大人ってのはこんな意味のない会話をして時間の無駄だと思わないのだろうか。不思議だなぁ。悪いのオレなんだけど。
あっ…まだ自己紹介してねえや。
オレは
自分で言うのもなんだが、成績はいいし足だってクラスで一番早い。
クラスの全員と仲良しだし、先生とだって仲良しだ。
「日晴〜今日も遅刻かよ。もっと早く起きろよ」
「ばかお前。オレは鍛えるために毎日走ってんだよ」
「うわぁ〜でた言い訳野郎だ」
「言い訳じゃねえ‼︎」
こいつは親友の
けどオレと永二は親友だからな。そんなことで喧嘩したりはしないんだ。永二とはほぼ毎日放課後に遊んでるし、土曜日なんて朝からずっと遊ぶくらい仲良しだ。
「あ…あの、日晴くんに永二くん。宿題集めてるから、ちょうだい」
「どわぁ‼︎ビックリしたぁ」
「おま…驚きすぎだろ」
ボサボサ頭にメガネの、いわゆるインキャって感じののこいつは、
永二と話してるのは見たことないけど、オレは悠斗とも仲良しだ。
ただ、大人数の時は声がちっちゃいし、あんまり喋らないんだ。
オレはそういうとこはあんまり好きじゃないかな。
もっと堂々とハッキリすればいいのに。
「んじゃこれ。永二とオレの宿題。よろしくな」
「う…うん。それじゃ僕、先生のとこに行ってくるね」
「あぁ、さんきゅーなー」
永二は黙ってる。こいつは好き嫌いがあるからな。仕方ないのかも。
「けど…お礼ぐらいは言えよ」
悠斗に何も言わない永二をオレは肘で突ついた。
「えっ、ああ。だけどあいつよ…」
「悠斗がなんだ?」
あっ…永二の表情が暗くなった。
「なんでもない」
「そうか…」
オレはこういう時に気を遣えるからな。聞かないでやろう。きっとケンカでもしたんだろう。
「あっやべ、もう授業始まるぞ」
「ほんとだ。席戻るか」
オレらが座るのと同時にチャイムが鳴った。
後から戻ってきた悠斗はギリギリで授業には間に合った。
ーーーーー
願いのパラドクス @yumawey
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