催眠術

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いつもクラスの端で本を読んでいた朝比奈。

誰とも交わる事なく、一日を一人で過ごす彼が気になってから、何度か絡んだ事もあった。

話せば普通に返してくれる別段変わった奴では無かったが、朝比奈自身から話し掛けてくる事も無くて、そんな彼の行動が面白くなかった。

ある時、朝比奈が図書館に向かったのを見計らって着いて行くと、偶々見つけた催眠術の本を手に取った。

初めは読む気などサラサラ無かった。

催眠術なんて空想の産物でしかないと、高をくくっていたからだ。

だけど、半信半疑で書かれていた催眠術を試してみたら、面白い程に朝比奈は催眠術に掛かったのだ。

「あン時は面白かったな～。お前が何でも言うこと素直に利くから調子に乗って催眠術を掛けすぎちゃった！」

ギラギラと怪しく輝く瞳を細めて、夕凪は唇を吊り上げた。

「でも、お前が悪いんだぞ？折角の俺のアプローチを無視するから。俺はお前の事が好きだったのに……あっ、今はもう両想いか！」

虚ろな瞳の朝比奈に目を向ける夕凪を見つめ、朝比奈は唯々『はい』と返事をした。

「嬉しいなぁ～俺も好きだよ？ヒナタ…だからさぁ、催眠術に掛かってる時ぐらい俺の好きなようにさせてくれよ？俺はお前みたく我慢が効かないからさぁ！？」

「……はい」

鼻歌混じりに傍らに置く本のページを捲り、朝比奈の唇を貪ると、夕凪はニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。

「さぁて、次は何をしようかな……？」

終