留守番電話

翡翠

私は東京都に住んでいる橋本██です。


広告関係のOLとして働いています。


父が他界した今、母親と2LDKのお部屋に住んでいて、家賃は15万円です。


今どき、珍しく固定電話が置かれています。


そんな私が1年ほど前に体験した怖いお話です。


♢♢♢


あの時は今年と違って気温も少し低く、体に打ちつける風がとても冷たかったのを覚えています。


毎日月曜日から金曜日まで働き、土日は休みのルーティンをこなすだけの毎日です


母親もスーパーで夕方のパートをしていて、20時頃に帰ってきます。


私は母より早い17時に退勤し、家に帰る。


橋本家はそんな毎日を過ごしていました。


ある日、家に帰ってきた私は固定電話のナンバーディスプレイが点滅していたのに気づきました。


引越しした当初とりあえず固定電話を置こうという母の強い望みで置いたものの


私も母も携帯を持っているので案の定、全く使う事も無く、電話も掛かって来ませんでした。


それなのに珍しく光っていたので私はディスプレイを覗いたら



“留守番電話1件”



と書かれていました。


もしかしてガスとか電気の請求の引き落とし漏れかなと焦ってすぐに留守番電話サービスに接続しました。



「留守番電話は1件です」


ピー─────



「もしもし、坂本さん?坂本さん?坂本さん?」



ここで留守番電話は途切れました。


ただの間違い電話に違いない。そう思いました。



♢♢♢



しかし次の日も、その次の日も同じ時間帯に留守番電話が入っていました。


内容は全て


「坂本さん?坂本さん?坂本さ〜ん?」


と私の名前と全く違う名前をただひたすら呼び掛けているだけでした。


30代くらいの女の人のような声です。


それが5日程続いたので流石にこちらから掛け直して間違いですよって訂正してあげよう。


そう思いました。



♢♢♢



次の日、土曜日で私は仕事が休みだったのでのんびりと██ (サブスク)で映画を観ていました。


お昼の12時を回った頃、固定電話が鳴りました。



プルルルル─────♪

プルルルル─────♪



あの人かもしれない、そう思って電話に出ました。




「もしもし」

「もしもし、坂本さん?坂本さ〜ん」

「あの、すみません、私坂本じゃないです。電話先、間違ってると思います。」












「知ってるよ、橋本だもんね」











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留守番電話 翡翠 @hisui_may5

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