第22話 神臓対策局ミズガルズ⑥ 研究発表

「君の活躍は、僕の元にも聞こえてくる。あの少年がここまで成長するとは、あの頃は思いもしなかった」

 穏やかな口調で、映像のフェーデが微笑んだ。

「君を助けられたことを誇りに思うよ」

「……ええ。感謝していますよ、先生」

 エルドは頷いた。

「先生のお陰で、私は、今ここにいます」

 だから、とエルドは言った。

「私は貴方を必ず捕らえます」

「……僕を捕らえるには、まず僕の元に来てもらわないと行けないな」

 フェーデは顔をノクターンへと向けた。

「やあ、ノクターン君。ご苦労だったね、よくエルド君と接触してくれた」

 ノクターンは映像の教授を睨んだ。

「……約束は守ってもらうぞ、教授」

「もちろん! 君がエルド君を僕の元へ連れて来てくれれば、約束はちゃんと果たすさ」

 フェーデの姿が消え、グラマティクス大陸の地図が映し出された。大陸中央部より少し南に位置する場所が赤く点滅している。フラムが顔を近づけて、発光地点を確認した。

「ふむ、コスタ峡谷ですな」

 地名を聞いたレゾンが眉を顰めた。

「また、めんどくさい所に住んでやがるな。南部諸国連合との国境線近くか」

 再び、フェーデの姿が映し出された。

「そう、僕の研究所はコスタ峡谷にある。正確な場所は、コスタ峡谷についてから案内しよう」

「ところで」

 エルドがフェーデに問う。

「何が目的ですか、教授?」

 エルドの問いにフェーデは一瞬きょとんとした顔をし、自分の額を叩いた。

「そうだった、そうだった。肝心なことを言ってなかったね。エルド君、君を僕の研究所に招待するのは、見てもらいたいモノがあるからだ」

「見てもらいたいもの? それは」

「それは来てからのお楽しみだ……まあ、僕の研究成果だ。きっと君にとっても興味深いものだと思うよ……では、再会を楽しみに……」

 フェーデの画像が乱れ始めた時、ノクターンは声を上げた。

「教授、私からも最後にいいか」

「何かな? ノクターン君」

「……お前は、私の姉の心臓の在り処を知っていると言ったな」

「心配しなくても、ちゃんと約束は……」

 フェーデの言葉を遮り、ノクターンは言った。


「姉の心臓を取り出したのは、お前か?」


 ノクターンの問いにフェーデは微笑み、沈黙した。

「……その沈黙が答えだな、教授」

「全ては、コスタ峡谷で明らかにするさ」

 では、とフェーデは一礼した。

「コスタ峡谷で、また会おう」

 機械の振動音が停止し、フェーデの映像が消失した。


 低い振動音が響く、漆黒の空間。

「これで、第一段階は終了だ」

 椅子の背もたれに身を任せ、フェーデはホッとした声を上げた。

「あとは、エルド君とノクターン君を待ってる間に最終調整さえすれば」

「教授ぅ」 

 空間に気配が一つ増えた。

「困ったことになりましたの」

「へ?」

「リゼンハイムが今、ユグドラシルにいることを私、シュタインメッツに話しちゃいまして……そのう……シュタインメッツが出撃しましたの」

 報告を聞いたフェーデは、苦笑した。

「やれやれ。これは下手すると、ユグドラシルが今日滅びるかもしれないなぁ」




 



  



 


 




 


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ラグナロク・ハート たーる・えーふ @taruefu-retro

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