第21話 神臓対策局ミズガルズ⑤ 久しぶりだね

 エルドの言葉からは、揺るがない強い意志が感じられた。説得が無理であることを悟ったレゾンは、ソファーの背もたれに身を任せ、天井を見上げて呟いた。

「さて、どうしたもんか」

 ノクターンは願った通りの状況に胸を撫でおろしたが、同時にエルドと教授にどんな因縁があるかのか気になった。

 そういえば、とノクターンは懐にいれたままになっていた機械の存在を思い出した。ノクターンは、教授から渡されていた小さな筒状の機械を懐から取り出し、机に置いた。

「それは?」

 ラーナが訪ねてた。

「教授から渡されたものだ」

 一斉に全員の視線が機械に向けられた。

「リゼンハイムを説得する際に、必要だったら使えと」

 フラムが機械を手に取った。

「……ふむ、どうやら通信端末のようですな」

「教授と話せるんですか?」

 エルドはフラムから機械を受け取り、ノクターンに尋ねた。

「……わからない。ただ、渡されただけだ」

 エルドがラーナを見た。ラーナはしばらく黙考し、頷いた。

「……使ってみましょう」

 レゾンが胸に鬼火を灯した。

「念のためだ。この機械自体が罠の可能性もある。俺がヤバいと判断したら、局長とノクターンの姉ちゃんは、俺の能力で避難させる」

「あれ? フラムさんは?」

「守られるほど老いたつもりはありませんぞ、エルド殿」

 心外そうにフラムが言った。

「エルド殿を掴んで、逃げることもできますぞ」

「これは、失礼……」

 エルドは苦笑し謝罪すると、機械を手に取った。

「では、スイッチを入れます」

 カチっという音をノクターンは聞いた。エルドの手の中の機械は振動し、電子音を放ち始めた。エルドは、機械を机の上に置いた。

 筒状の機械の先端が開き、光が空中を照らす。そして、光の中に人影が映った。

 立体映像。人影の映像は、はじめはノイズで乱れていたが徐々にその輪郭を鮮明にした。

 眼鏡をかけた、白衣の男がはっきりと映った。

 映像の白衣の男は周囲を見回す動作をして、エルドに視線を合わせた。


「やあ、エルド君。久しぶりだね」

 教授、フェーデ・アドヴェントの声が機械から発せられた。

 

 

 





 

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