第20話 神臓対策局ミズガルズ④ 教授

 フェーデ・アドヴェント。男性。通称、教授。

 元神滅心臓研究組織トネリコ機関に所属。ラグナロク・ハートならびにハートホルダー研究を専門とし、ラグナロク・ハート移植手術の基礎を構築した一人。機関所属時に私的な人体実験ならびに臓器密売に関与していることが発覚、研究資料とともに行方を暗ます。その後、臓器密売組織や反政府組織などを闇社会を渡り歩き、ゼルマ病院心臓密売事件、シンカン爆破テロ、ハートホルダー至上主義団体暴動事件に直接または間接的に関与。即時殺害が認められる、ドラウグ級重犯罪者に指定。グラマティクス大陸全土で指名手配されて現在に至る。


「以上が、フェーデ・アドヴェントの情報です」

 と言いながら、フラムが大量の書籍を机の上に置いた。

「それと、これがフェーデが過去に執筆した研究書です。参考にと思い、ご用意いたしました」

「よく、これだけ集められたもんだ」

 レゾンが『ラグナロク・ハート生育の過程』というタイトルの本を手に取って、言った。

「確か、ほとんど封印指定じゃなかったか?」

「ほとんど、じゃないわ……全てよ」

 ラーナは『能力発動が関係する心疾患』という本を捲りながら、訂正した。

「フェーデの著作は全て、世界樹同盟が管理する情報倉庫、アクセス権限レベル5以上が必要の最奥に保管されているわ」

「……じゃあ、この本は一体」

「ほっほっほ、昔取った杵柄、という奴です」

 ノクターンも本の山から一冊、手に取った。それは黒革で装丁されており、タイトルが表紙にも背表紙にも書かれていなかった。

「これは」

「懐かしいですね」

 タイトルのない本を訝しむノクターンに、エルドが言った。エルドはノクターンから本を受け取り、懐かしそうにぺらぺらとページを捲った。

「……神々の再臨、教授が書いた最初の本です」

「まあ、なんにせよ、だ!」

 レゾンが本を山に戻して言った。

「結局のところ、まずはエルドがどういう行動をとるかで、この後の動きが変わってくるよな」

「……そうです、ね」

 エルドは黒い本を閉じて、言った。

「ノクターンさんと、教授の元に行こうと思います」

「マジか」

 レゾンはノクターンをチラッと見て、言った。

「教授にどういう思惑があるかもわからない、かつ、ノクターンの姉ちゃんには悪いが、十中八九、罠だと思うぜ」

「同意します」

 フラムが頷いた。

「十中八九どころではないですな。わざわざエルド殿を呼び出すということは、教授はなんらかの計画にエルド殿を利用しようとしているに違いません」

 ですよね、とエルドは笑みを浮かべた。


「でも、行かないといけません。決着をつける時が来たんです」





 

 

 





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