第8話 帰れない二人

うつろな瞳で愛してると君が言う

適量のODでおよぐ君の瞳から

その頬を伝って涙がこぼれる

少し冷えてきた午前2時の異様な光景

冬の手前の帰れない二人

何も見なかったように通り過ぎる

残業帰りのサラリーマンと

二人を冷やかす酔っぱらいの声が

ビル風に乗って反響する

そんな僕もお酒と薬で朦朧とする中

官能的な悪夢にうなされる

無責任な親ガチャと人は言う

でも確かに僕らは存在し

その生きる証を求めて彷徨う

誰よりも愛されることを強く願い

虐げられた過去を許そうと願うたび

親と子の気持ちは反発し合い

またこの場所へと戻ってくる

そして大人の差し伸べる救いの手を跳ね除け

ふたたび僕らはここで愛し合う

君は眠っているのか分からないまま

僕らは抱き合いながら夜を明かす

冬の手前の帰れない二人

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