ペット妄想あれこれ
旗尾 鉄
第1話
子供の頃、カンガルーをペットにしたいと思っていた時期があった。
おそらくテレビの自然番組で、オーストラリアの広大な大地を自由に跳ね回る姿を見て、憧れたのだと思う。
動物園の檻の中で行儀よくしている彼らに出会ってからは、そんな気持ちは薄れてしまった。
同じく私が子供の頃は、動物が登場するテレビアニメが何本かあった。動物を擬人化したものではなくて、主人公のペットとして登場し、ときに主人公の心の支えとなって重要な役割を果たす動物たちである。
タイトルは伏せるが、その中の一本に、アライグマが登場するアニメがあった。当時たぶんまだ小学生にもなっていなかったと思うが、私はこの愛嬌のあるアライグマが大好きだった。
ところが大人になってから、このアライグマについて、なにやら不都合な真実に直面してしまったのである。
アライグマの写真を見たのが事の発端だった。
写真のアライグマと記憶の中のアライグマに、どうも違和感がある。違和感の正体にはすぐに気づいた。毛色が違うのだ。
本物のアライグマというのは、どうやら灰色っぽい毛色をしているらしい。
だが、私の記憶の中にいるアイツ(名前も覚えているが伏せておく)は、キツネのような黄色っぽいカラーリングがなされていたのだ。
犬や猫のように、アライグマにもいろんな色の個体がいるのかもしれない。そう思って調べてみたが、そうではなかった。
やがてネット検索するうちに、アニメの毛色に似た写真を見つけてしまったのである。
問題は、それはアライグマの写真ではなかったことである。
私が見つけたアニメのアライグマに似た動物は、レッサーパンダだった。
もちろん純真な子供をだます意図などなく、こっちのほうが可愛らしいからそうしたのだろう。今なら不正確な表現として問題になるかもしれないが、これもまた、おおらかな時代の微笑ましい思い出である。
動物の話題のついでに、もしペットを飼うとしたら、などと妄想してみる。
犬か猫かといわれたら、完全に犬派である。
ある程度、大きさのある犬種がいい。少なくとも、柴犬くらいは。
和犬でも洋犬でもいいが、立ち耳の犬種が好きである。
服は着せない。これはもう、絶対である。
ちゃん付けで呼んだりはしない。うちの子、などとは呼ばない。
あくまでも私は子供ではなく、何年かを共に過ごす相棒として、ペットを飼いたいのである。
つらつらと、とりとめのない妄想をしてみたけれど、私がペットを飼うことはまずないだろうと自覚している。
生活環境の面で、現実的に世話をしてやれないというのもある。
だがそれ以上に決定的なことがある。
私は、可愛がっているペットの最期を看取るなどできないから。
十数年にわたって同じ時を過ごした仲間の死を見届けるなんて、とてもじゃないが悲しくて無理だ。
そんな私には、やはりペットは妄想にとどめ置くのが分相応のようである。
了
ペット妄想あれこれ 旗尾 鉄 @hatao_iron
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