第5話 新たな危機
そして、いよいよランゲイルさんとのご対面だ、と行きたいところだが、まずは周りからだ。
まずは大臣の元へ行く。
アントラスさんだ。
調べたところ、彼が金の動きをつかんでいるという事が分かった。
「アントラスさん、今日ここに呼んだ意味は分かりますか?」
「いや、全然わからないな。いったいどうしたんだい?」
「この資料を見てください」
そして私が置いた資料。そこに収支報告書が入っている。
「どう考えてもお金の出入りがおかしい気がします」
「それは君の主観だろ?」
「いえ、そこにも証拠があります」
そう言って私は証拠を置いた。
それは、収支報告書の偽装のあかしだ。
そう、本来の収支報告書を偽装している物だ。
入ってきたお金が本来よりも少ないことになっている。
「つまり、貴方は金額を詐称し、その差額を得て、賄賂を渡していた」
「賄賂なんてそんなものではない。これらは全てへ―ゲル様のためだ」
「なんですって!?」
ヘーゲル様のため。
「という事は毒殺事件の関係者」
「そうだ」
「何を言っているんだ。アントラス」
ヘンデルソン様が叫ぶ。
「冗談など言ってはいませんよ。私はヘーゲル様がこの国をつくことを期待していました。それは、ヘンデルソン様、貴方の知性よりも確実に良くなると。……ヘーゲル様は積極的に敵国に攻め込んこむ事を度々提言してきました。だからこそ、賄賂でヘ―ゲル様を王にするつもりだった。だが、思ったよりも穏健派が多かった」
「だから毒殺に動いた……」
「そうだ。だからこそお前を部屋に閉じ込めていたのだ」
あの時か。
私が邪魔だったから。
「教えろ!! あとは誰が関わっているんだ?」
「教える義理などない」
「そうか……」
ヘンデルソン様はそう言って衛兵を呼んだ。
そして、アントラス様は捕らえられた。
次はランゲイルさんだ。
ランゲイルさんにとってもヘーゲル様が王になる方がいい。
何しろ、戦争状態の方が物が良く売れる。
食料を寡占状態にして高く売るのも可能だし、
武器を作ればそれもまた金を産む種になる。
ランゲイルさんも呼んでいる。
「ランゲイルさん。話いいですか?」
「どうしたんだ?」
「貴方もまた」
「これを見ても言い逃れできますか?」
「むむ」
私が見せたのはまたランゲイルさん用の証拠だ。
そこには、いろいろな不正の証拠が書いてある。
「しかもあなたは戦争を起こそうとアントラスさんと、ヘーゲルさnを王にしようと画策していた。これは国家反逆レベルです。あなたは、国を潰そうとした。この罪は重いですよ」
「はっそれがどうした。私はそれには関わっていない」
「こんなに証拠があるのにですか? しかも、貴方はお金を不当にもう絵k手た。これは言いのあれが出来ません」
「大変です」
そんな時に、人が入って来た。
どうしたのだろう。
「今は会談中です」
「しかし、敵兵の侵略にあったと」
「なんだと」
「なんですって」
詳しく話を聞くと、この会談中に東の国境に敵兵が集まったという話らしい。
しかもそれは西の列強オルステイラン国。つまり、ピンチだ。
この前からピンチに次ぐにピンチだ。
結局この国は亡ぶ運命にあるの?
それは私というイレギュラーがいても変わらないの?
いえ、諦めるわけには行かない。
まだ手は打てるはず。
まずは、狼狽えているヘンデルソン様を宥めなきゃ。
「まだ手はあります。援軍を探すのです。それにこれは急襲、つまり侵略戦争。この戦争の非人道差を訴えれば同盟も組めるはず」
実際に、ナチスドイツも負けている。
イギリスアメリカなどの手によって占領されたフランスは開放された。
その時に来たアメリカ兵……と、こんなことを考えている暇ではない。
今はこの国を救う方策を練らなければ。
「ところで、貴方が主導しましたか?」
ランゲイルなら国を動かすくらいの金が艇はいる。
その軍勢でこの国を滅ぼすことだぅて。
「それはどうかな」
「っ」
これは埒が明かない。こちらに構っている暇ではない。
私はランゲイルさんの捕縛を頼み、王の間に向かった。
「話は聞きましたか父上」
そう、ヘンデルソン様が言う。
「ああ、攻め込まれているようだな。これは完全に私の失態だ。国内にこんなに入り込まれていたとはな。さて、これをどうするか。兵を送っているが、確実に食い止めきれない。今の兵力で勝てる方法などない」
「それをどうするかという話ですよね」
「ああ」
同盟を呼ぶなら南に位置するサメリダ王国が適任だ。
何しろ、兵力が薄く、この国が終われば、次に狙われるのは確実にサメリダ王国だ。
そして、北に位置する帝国。私の追放先にこの国を選んだし、国交は結んである。
いい取引先にもなっている。
だからこそ、同盟を組むのにも最適だ。
だが、少し心配な点もある。
というのも、ランゲイルさんがどこまでお金を使っているかわからない。
もしお金で不干渉を求められていたら終わる結果となる。
「大変です。王国は、王一族の処刑と、ヘーゲル様の王就任を求めています」
「ヘ―ゲルのやつめ、やりおったな」
「父上」
「待ってください。まだ手はあります」
確か乙女ゲームのシナリオでは、あの王国に行くシーンもあったはずだ。
「私は知っています。かの国の弱点を」
「どういうことだ!?」
「とりあえず、動きましょう。話は動きながら話しましょう」
そして私は、サメリダ王国へと向かう。
私の持っているあの情報を伝えれば協力してくれるはずだ。
サメリダ王国の国王はハメル・サメリダ。
まだ齢一六の若王だ。
だが、この場合は若い方がいい。
それに彼は保守というよりも革新派の人間だ。交渉が成功する可能性は大いにある。
さて、早速王の間に向かう。
勿論、護衛三人だけを連れて。
上手くやらなければ私たちの国は亡びる。
さて、がんばらなくちゃ。
「ではどうぞ」
そう言われ、私は建物の中に入っていく。
その中にはたくさんの人がいる。皆私を警戒しているようだ。
まあ仕方のない事だ。
急に訪れた人間だ。それにこの国との国交などないのだ。
「さて、急な訪問大変失礼な事だと思っています。ただ、今回私たちの国が急な襲撃を受けています。援軍を受けたいと思います」
「……確かに、大変な事になっているようですね。しかし、我々には下手に王国を刺激する必要などない。その方が上手く立ち回れるのだから」
「しかし、放置しておけば、不利な状況に陥る可能性がある」
「だが、それは支援したとて同じ。勝てる手はずがあるとは思えない」
「そうですか」
普通に考えたらそうなるわよね。でも、勿論これでは終わらない。
「私は、勝てると思っています。勿論勝った際の分け前も考えています。あの国の――」
「問題はそこではない。どうやって勝つかだ。勿論あの国の脅威が去るなら、それに越したことは無い」
「それはこちらも同じです。私はあの国の弱点を知っています。それは……あの国は実は内部分裂しています。その国のアンリ王女が国の在り方に不満を持っており、反乱を企んでいます。彼女に協力を要請するのです」
「少し待ってくれ。確かにそう言う噂もある、だが、あくまでもそれは噂だ。確定事項にするのはおかしくないか?」
「いえ、おかしくはないと思います。……なぜなら私は彼女と一度出会ったことがあります」
そう、正確にはゲーム内で婚約破棄される前の一年間の間に会ったという事だが。
つまり今現在の私は会っていない。
そのストーリーでは、反乱の内容を私に話し、協力を要請するという事。物語上の私は断ったが、今の私は違う。
「その時に彼女はこういっていました。彼女は国の中核をリベリオン将軍を仲間に引き入れ、戦争中に反乱を企てるそうです。なのでその混乱の隙にこちらから逆襲する。そうしたら戻る国のない敵は皆殺しに出来ると思います。その後、アンリ様と休戦協定を結び、戦争は回避されます」
「それはいいのだが、その場合、結局我々への利益はなんだ? アンリ王女の怒りを買うだけじゃないのか?」
「いえ、そうではありません。彼女は温厚派の勢力。つまり、戦争を避け、国内の維持に力を注ぐ。そして戦争ではなく商業で国を大きくするという方策を取る予定です。そんな彼女からの反撃はおそらくないでしょう。そして、そんな彼女が取引先として目をつけるのはおそらくこの国です。その際に、あの国が大きくなりすぎていると、取引が難しくなる」
「なるほど。勢力を削り、取引を成立させようと。……だが、一つ問題がある」
「なんでしょうか」
「信憑性がない。君が、僕の国を味方に取り入れようと、嘘でたらめを言っている可能性もある」
「ならば証拠を」
シュシュリーさんの時みたいな嘘の手紙はすぐにばれ、外交問題になる。
だったらどうしたらいいのか。
答えは簡単だ。
「これが証拠です」
私が出したのは、ゲーム内で彼女が話してた内容そのものを記した物だ。
「創作にしては出来過ぎてはいませんか? これを私のもうそうだとケチつけるのは結構です。しかし、その間に決定打を失わないようにお願いしますね」
そう言って私は判断を促す。
「それは、詳しく話し合わないと結論は出せない。結論は後日でいいか?」
「ええ、勿論。しかし、私たちだけではあと何日持ちこたえられるかわかりません。できるだけ早く返答をされる方が良いと私は考えています」
そして私はその場を去った。
一人の使いを置いて。
婚約破棄されたわたし、隣国の王宮での連続毒殺事件を解決しながら王太子殿下と幸せに過ごします 有原優 @yurihara12
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