第9話 勉強会

 放課後、今日は約束の勉強会当日だ。

 黒江と日生には色々と準備があるからと言って、先に学校を出た。

 クラスの人気者二人と帰ってたら目立つし、ましてその後家に連れ込むなんてバレるわけにはいかないので黒江達より一足先に家に帰る事にした。

 

 家の前に着き、隣に居るに声をかける。


「着いた、ここだよ。中間テストまで迷惑かけるけどごめんな雛森」


 雛森には元々一緒に勉強しないかと誘われていて、今回先生をお願いした。


「う、うん……友達ならこれくらい普通よね。お邪魔します」


 家の階段を上がりながら心の中で雛森に謝罪する。

 ごめん雛森……普通では無いと思う、実際俺の家に来た事ある女子なんて風祭くらいだし。


「ここが俺の部屋、今飲み物とか持ってくるから楽にして待ってて」

「は、はい!」


 いい返事を聞きながら下に降りる。

 親は帰ってくるのが遅いので家には俺達以外誰も居ない……本当に下心とか無いんだけどね……。

 そんな事を考えながら飲み物を入れているとピンポーンと音が鳴った。

 黒江達、もう来たみたいだ。


「来たわよ、美少女二人がね!」

「おじゃまします」

「雛森も居るから合わせて三人な、二階の奥の部屋が俺の部屋だ。扉が空いてるから先に向かっててくれ」

「うぃー」


 そう言ってぴゅーっと階段を上がっていく。

 四人分入れなきゃなと台所に向かい、冷蔵庫を見ていると後ろから声をかけられた。


「私も手伝うよ」

「……日生?お前も先に行ってていいよ、俺が運ぶし」


 そう言ったのだが一向に日生は動こうとしない。


「おい聞いて」

「『雨森春』、これ以上ひなたに近づかないでくれないか?」


 俺の言葉を遮る日生。

 なるほど、どうやら二人で話したいらしい。


「『雨森君』じゃなかったっけ?」

「そう呼ばれたいのなら余計呼びたく無くなったな。君が最近ひなたの周りをうろちょろしている事は知っているよ、それをやめてくれと言っているんだ」

「何言ってるかよく分からないけど、それは黒江が決める事だろ」

「ひなたも嫌がってるさ、間違い無く……ね」


 こいつは何を根拠に言ってるんだ?

 確信があるのか知らないが俺は黒江に頼まれた側だ。


「とにかく中間テストまでは我慢するよ、雛森さんにも迷惑だからね。それ以降はダメだ。どうせひなたにちょっと優しくされて好きになっちゃったって所だろう? 悪いが諦めてくれ」


 かっちーん……こいつ好き勝手言ってくれちゃってー……。


「へー中学から友達の割に黒江の事全然知らないんだな。高校に上がって中々自分が構って貰えなくて嫉妬か? 意外と女々しいんだな。あ!そうだ……俺から黒江に言ってやろうか?って」

「……っ!調子に乗るなよ雨森春!絶対にひよりには近づけないからな!」


 その後日生は一度俺を睨みつけ、階段を上がっていった。

 こっちのセリフだバーカ!バーカ!

 勝手に好きとか決めつけやがって、黒江が大事なのは分かるけど他が見えて無さすぎだろあいつ。




「えっと、ここはこの公式を使うの。それでこうして……」

「こういう事ね、なるほど〜……」


 隣では雛森が黒江に勉強を教えている。

 雛森は教え方が上手いな……黒江も別に勉強が苦手な訳では無いので順調そうだ。


「おい雨森春、ここを教えてくれるか、な!」

「いっ……!?」


 黒江達を横目で見ていたのがバレたのか机の下にある俺の足を日生につねられる。

 こいつ……そっちがその気なら買ってやるよ、その喧嘩……!


「うーん……俺にはちょっと難しいかな~、そうだ!俺と雛森に教えてもらいなよ!」

「いやー私は、雨森春がいいなー……っ!」


 笑顔のまま日生に腕を掴まれる。


「嬉しい告白をどうもありがとう……っ!でもごめんなー、分からないんだわ。だから日生……この手を離せ!!」

「断る!こんな美少女が君をいいと言ってるんだ、今後一生無いぞ!!」

「あるわ!あとなんでお前らは自分から美少女とか言うんだよ!!」


 もはや黒江を守れれば自分を犠牲にしてもいいと言う訳か……クソ!こいつ力が強い……! あーもっと鍛えてればよかった!


「はぁ……はぁ、喉が乾いたな。ちょっと下に飲み物取ってくるわ。黒江、雛森、何飲みたい?」

「私オレンジジュース」

「わ、私はさっきのジンジャーエールで」

「よし任せとけ……日生は勉強に集中しててくれ!」

「は、はぁ……はは……何を言ってるんだ、私も手伝うよ。雨森春一人にやらせるわけにはいかないからな!」


 何か盛るとでも思ってんのかこいつは! せめて一人にさせてくれよ!


「……仲良いわね、二人とも」

「うん、元から友達だったの?」

「そんな訳無いだろ! どこをどう見たらそう見えるんだよ!」

「私はもっと仲良くしたいんだけどねー……ほら飲み物を取りに行くんだろ!早くしろ!」

「なんでお前に急かされなきゃいけないんだよ!あークソ!」


 結局、二人で下に行く事になった。

 その後トイレに行くタイミングがあり、スッキリした顔でドアを開けるとこいつは廊下で立っていた……。




「今日はここら辺で終わりにしましょう、お疲れ様」


 雛森の合図と共に教科書を閉じる。


「んー……!疲れたー!」

「あぁ……疲れたな。主に誰かさんのせいでな」

「誰の事かな」

「お前しかいないだろ」


 時計を見ると夜の七時過ぎ、玄関を開けるとすっかり外は真っ暗だった。


「じゃあ、また明日ね雨森君」

「ほらひよりも帰るよ」

「はいはい……明日は私もお菓子持ってくるわ」

「ああ、気をつけてな」


 三人を見送りドアが閉まったところで座り込む。

 はぁ……思ったよりめんどくさいやつだな日生理久。

 そもそも何であんなに俺と黒江を離したいんだ? 本当に嫉妬だけなのか?

 黒江に相談してもいいが……とりあえず中間テスト終わるまでは我慢する事にしよう、今は集中して欲しいし。



 ※※※



「うーん……」


 夜、私は迷っていた……雨森に通話をかけるかどうかを。

 聞きたいことはそんなに無いんだけど……理久と何も無かったかなとか?

 あれ、なら別に通話じゃなくても良くない? というか何で迷ってんのよ……もういいやかけよ、えい。


『もしもし黒江?どうした?』

『……ちょっと暇で、何か話さない?』

『なんだそれ……今日は疲れて眠い』

『う……そう。悪かったわね、また明日!』

『おやす』


 雨森が言い切る前に通話を切り、スマホをベッドに投げる。


「はぁ、何してんだか」


 布団の中に入り、目を瞑る。

 雛森さん分かりやすかったなー、この調子で少しでも順位上げなきゃ。

 ふん、めちゃくちゃ順位上げて雨森あのバカを驚かせてやる。


「……」


 ……雨森には、教えて貰えなかったな。


「……寝よ」


 その日はそんな事を考えて眠りについた。

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ドルオタな俺、プロデューサーになる。 アマオト @Colagumi

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