第8話 体育館裏の告白って見た事ない
入学から二週間程経ち、クラスでの立ち位置もある程度固まりつつある今日この頃。
ホームルーム前のこの時間に俺は、教室を眺めながら考え事をしていた。
現在このクラスには大きく分けて三人、中心と呼べる人物が居る。
一人目は先日学級委員長となった『黒江ひより』。
明るく、可愛く、話しやすいの三拍子が揃った俺がプロデュースしている女の子。
……まぁ裏の顔はちょっと違うのだが。
二人目はショートカットでボーイッシュな『
美少年の様な見た目と優しさが王子様みたいで、特に女子からの人気が高い。
話したことは無いが黒江や風祭と同じで彼女も中学が一緒だった。
三人目はクリーム色の長髪でギャルな『
ザ・ギャルな見た目でまつ毛が長い、あと胸が大きい。
俺みたいなオタクには冷たい態度をとる反面、良く相談に乗っている姿を見かけるので意外と情に厚いのかもしれない。
この三人の中で黒江と日生は仲が良い、詳しくは知らないが何でも中学からとの事。
となると現状、黒江のライバルはとりあえず鈴鹿だ。
「結、鈴鹿ってどんな奴なんだ?」
「雨君……やめときましょ?無理ですよ」
「いやそういう事じゃ無くて……」
隣に座る結に聞くと可哀想な目で見られた、そういう事じゃないなら教えますけど……と渋々話し出す。
「私もそんなに話した事は無いですけど、まぁ見ての通りギャルですね。二次元とかも興味無い感じで……でも見た目より優しい人ですよ」
「ふむ」
おおよそ俺の感じた通りだ。
「運動能力は?」
「運動能力? うちのクラスだと女子の中で一番高いんじゃないですかね……この間の体力テスト見た時にそう感じました」
「そっかー……うん、ありがとう結」
何でそんなこと聞くんですか? と頭にクエスチョンマークを浮かべる結に忘れてくれとだけ返し、自分の世界に戻る。
近々二つの行事がある、それは『中間テスト』と『体育祭』だ。
黒江をプロデュースする上でこの行事は外せない。
この学校はテストの度に順位を廊下に貼り出すので、当然順位が良いだけで噂が経つ。
対して体育祭は全校生徒が参加する為、活躍すれば名も顔も売れる。
すなわちこの二つの行事は黒江の名前を広めるのにうってつけなのだ。
そんな訳で鈴鹿の運動能力を聞いたのだが……クラスで一番高いときたか、うーん。
予め黒江にはこの話をしており、その際に聞いたのだが。
「学力は普通くらい、運動能力は少し低いかも……?」
と言っていた、聞く限りでは期待は出来無さそう。
ミスコンで優勝することが目的な訳で、学力も運動能力も必要不可欠では無いのだが……頑張る価値はある。
と、言う訳で。
「勉強会〜?」
「ああ、体育祭より中間テストが近いからな」
昼休み、黒江に朝から考えていた事を伝えた。
「というかあんた普通にクラスで話しかけなさいよ、なんで体育館裏なのよ……告白?」
「ミスコン取るんなら変な噂が立たない方がいいだろ、万が一だ」
「別に気にしないのに……勉強会かー、短期間でそんなに変わるもんなの?」
「別に一位取れってんじゃ無い、三十位辺りでも結構いい目で見られるだろ」
「三十位も結構キツいと思うんだけど」
一学年全員で二百四十名、かなり上位ではある。
「それに誰が先生するの?あんたって頭良いの?」
「ああ、中学ではずっと学年一位だった」
「……マジ?」
「だからなんとかなるかなって」
一応もう一人候補がいるのだが、二人も先生役は要らないだろう。
「おけ!分かったわ、じゃあ日程とか場所とか決めなきゃね!あんたの家で今日の放課後からでも……」
「家の使用は俺の許可を取ってからにしてくれない?」
でも外で同級生に見られるよりはマシか……と納得しかけた瞬間。
「ひより、こんな所にいたんだ」
「「……え?」」
声の方を向くと、日生理久が体育館の影からひょっこりと出てきた。
「理久! 何でここにいるのよ!? というかいつから……」
「今日から勉強会するみたいな事しか聞こえてないよ。それより雨森君、それ私も入れて欲しいな。それとも……ひよりと二人きりがいいのかな」
「ちょっと!こいつはそんなんじゃ……」
黒江をつけてきたのか? そんなに大きな声では話してないから日生の言っている事は事実だろう。
黒江に悪い虫が寄っているかもしれないから自分も一緒に……って所か。
しかしこちらとしては好都合だ。
せっかく日生の方から参加したいと言ってくれた、こんなチャンスをわざわざ手放す必要はない。
今後のことも考えて日生の事は知っておきたいからな。
よって断る理由は、無い。
「良いよ、ただ明日の放課後からでいいか? 二人教えるなら先生も二人いた方がいいだろ、あてがあるからさ」
「分かった、ありがとう雨森君。ファミレスとかでやる感じかな」
「いや俺の家だけど」
そう言うと面食らったように日生は固まる。
「へ?……い、家? 私達女の子で雨森くんは男の子だよね?」
「別に嫌なら俺と黒江の二人でもいいけど?」
「私は別にいいけどー?」
「……っ!分かったよ、君の家だね。了解」
それじゃあ話はまとまったので俺はこれで……とその場を離れた。
去り際、日生は俺を睨みつけているように見えた。
確実に悪い印象をもたれてるな、家にも誘ったしな。
ま、とにかくもう一人の先生には明日から大丈夫か聞いておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます