第14話 小さな旅、時を超えて。

        ー朝ー


 はぁ、それにしても旅が出来ないのは少しガッカリするな。


 この時の俺の目標は、もうすっかり旅をする事になっていた。


 そうだ、いっそ父に交渉してみよう。


 とは言っても、父は仕事で家にいない。となると父が家に帰ってくるまで俺は暇だ。


 前みたいに森に行くのはもう懲り懲りだ。なんたって死ぬところだったんだからな。

 父がいなかったら確実に死んでいただろう。


 父には感謝するとして...うーん...。


 俺は暇を持て余している。だからと言って特別行きたい場所もない。


 何か面白そうな場所...そうだ、夢で思い出した。町だ!


 町が遠いといっても、別に日帰りできない距離ではない。


 俺は準備を整える。


 『母さん!ちょっと出かけてくる!』

 「はーい!前みたいな事にはなっちゃ駄目よー!」


 バタン!


 よし、別に町に行くこと自体は良さそうだ。

 でもどうしよう、移動手段がない。


 ワープを使うのもいいが、多分往復は出来ないだろう。


 となると徒歩しかないか。


 俺は歩き出した。


 なんか今思えばこの世界に来てから、あまり異世界らしい事をしていないなぁ。

 もっとモンスターと戦ったり、もっと仲間ができたり...なんてものを想像してたんだが。


 まあそりゃ5歳にそんな事させるわけないか。


 ん?5歳?


 俺はその言葉に何か引っかかった。


 そうだ、魔法で時を移動すればいいんだ!


 『タイムワープ!』


 ...出来ない。


 俺のちょっとした希望は一瞬にして打ち砕かれてしまった。


 てっきり想像で魔法を作れる世界なんだから、時空くらい移動できるものだと思っていたのだが、そんな事もないのか?


 いや、違うな、多分想像力が足りなかったのだろう。

 時空を移動する魔法なんて、高度な魔法に決まっている。

 つまり今の俺では無理ということだ。


 だけど誰かにやってもらう分には行けるのではないか?と、俺はそう考えた。


 誰かとてつもない想像力を持つ、そんな人なら、時空を移動する魔法が使えるかもしれない。


 そんな感じで、無事村に着いた。


 村にくる前は特に目的がなかったが、今は違う。


 そうと決まれば早速行動だ!

 『あの、時空を移動したいんですが。』

 「時空?頭おかしいのかテメェは!」


 『あの...』


 俺は一時間ちょっと、こんなやりとりを繰り返した。だがそんな俺の言葉に応じてくれる人は一人もいなかった。


 そりゃそうだ。

 急に知らない少年から、時空を移動したいなんて言われても、って感じだ。


 もう空も暗くなってきた。

 残された時間はあと数分と言ったところだ。


 俺は少ない時間で希望を求め、色々な人に言い回った。


 全員同じ回答をする中、一人だけ違う回答をする人がいた。


 『あの、時空を移動したいのですが...』

 「...」


 その人は無言で俺の手を握り、雑に引っ張った。


 『ちょっと!ちょっと!』

 もちろん俺は抵抗した。だが離すどころか、力は強まっていく一方だ。


 怖い、怖い、どこに連れて行かれるんだ。もしかしたらころされたり...

 想像をすればするほど俺は怖くなった。


 「おや坊ちゃん、ここに何のようかな?」


 俺の前には老けた老人がいた。


 『こ、こんばんわ。』


 焦っていたせいで、挨拶をしてしまった。


 「こんばんわ、で、何のようかな?」


 『いや、僕も分かんなくて、この人に連れてこられt...』


 その時、俺の横には誰もいなかった。


 「ほう、ゴーストに連れてこられたのだな?」

 『ゴー、スト?』


 「お前さん、時を戻したいとか、進めたいとか、時に関連することを誰かに言ったか?」

 『は、はい。』


 「それだよ、ゴーストは時には敏感でなぁ、すぐここへ連れてきてしまうんだ。」


 「まあいい、話はここからだ。

 何が目的だ?」


 老人はそう言うと、真面目な顔になり、俺に詰め寄ってきた。


 『と、時を進めたくて!』


 「先に言っておくが、この取引は一度だけだ。一度進めたらもう巻き戻すことはできん。それでも?」


 『は、はい!それでも進めたいです!』


 そう言うと老人は、無言で手を差し伸べてきた。


 「代金は無料だ。後悔する事にはなるがな。」


 俺は老人の手に恐る恐る触れる。


 「あばよ坊ちゃん。」


 その瞬間、外の明るさが変わったのと同時に、視界の高さが変わった。


 『成長、したのか?』


      ーーー続くーーー

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想像するだけで魔法が打てる世界に転生しました。−想像魔法で異世界満喫ライフ− @arinoyounitiisaiutsuwa

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