新説魔法論 序文

ほんや

新説魔法論 序文

 まず最初に、この本を出せたことに感謝します。数々のご意見をくださった魔法使い様方、この本を作ると打診してくださった出版社様に改めて感謝を。


 この本は魔法に興味を持ってくれた人、今から魔法を勉強しようとする人、そういう人たちに向けて書いた魔法の基礎となることをまとめた本です。今まで数多くの著名な指南書が作られました。『フラム魔術書』、『ケインハール異譚書』、『エイリアス魔法新書』など様々なものが挙げられます。私はこれらの著名な書を始め遥か昔の魔法の古典や秘境に伝わる隠された魔法、魔法の祭典マギア集会での最新の研究を読みこの本に詰め込み、私の生涯において最高傑作といって過言ではない本を作ることができました。改めて関係者の皆様にお礼を申し上げます。


 さて、魔法の現状を知っているでしょうか。近年、魔法の発展は停滞しています。目立った報告も少なく、革新が起きたのはもう数十年も前になってしまいます。大きな理由の1つとしては科学の発展が挙げられるでしょう。科学の始まりは魔法よりずっと最近なので科学の目覚ましい発展を見て科学者を目指す子どもも多いです。それだけでなく魔法と科学の相性が悪いので科学の発展に魔法が関われないということもあるかもしれません。助長になってしまうので簡単に済ませますが魔法は想念の産物であり、想像という曖昧なものに基づいた学問です。しかし、科学はまだ脳の活動の実態まで解明していません。なので現状、魔法が科学に関わることはできません。そんな風に魔法は停滞をしています。


 先ほどのように、魔法と科学という2つの学問は大きな差を抱えています。世間には魔法は古臭いなどという人がいるかもしれません。確かに魔法と科学は大きく違います。しかしこの2つは全く違うというわけでなく共通部分を持ちます。それは、魔法と科学は目的を果たすための手段というところです。科学は言うまでもないですが、魔法は金を生み出そうとして編み出された錬金術がもととなっています。現在ではどちらの学問も利益を生み出すため、世の中を便利にするため、面白いところではスポーツにも利用されています。こう考えるとやはり共通しているといえるでしょう。長いこと語ってしまいました。結局忘れられることが多いのですが、魔法というのは手段なんです。あなたの目的のために存分に使い倒してくれればいいのです。


 最後に、私の信念について記してこの序文を締めくくろうと思います。私が魔法について教えるときにいつも最初に生徒に伝えている言葉です。それは「魔法とは自由なものだ」ということです。魔法には才能が要ります。あなた達の持つ才能はあなたの望む魔法に適さないかもしれません。しかし魔法はその曖昧さ故に膨大な法則の組み合わせによって構成されるため、1つの魔法と言っても無限に近い組み合わせがあります。その組み合わせの中にあなたが望むものがあるかもしれません。そのため自由に発想して、ありとあらゆる探求をしましょう。自分を自由に見ることができればできるほど、あなたの魔法は広がります。どうか、あなたの魔法が自由であるように私は願っています。


 (魔法統一教育協会会長兼マギア魔法大学教授虹の魔女カーナ・ノーヴァ)

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