真っ黒な誘惑
禁断ちゃん
第1話
どれくらい眠っていただろうか。左側にある正方形の窓を見ると、水色に染まっていた。夜はもう明け始めていた。私はすぐに、自分のおかれた状況を把握しようとした。ベッドの下に散乱した自分の服。奥にはスーツの脱ぎ捨てられた跡がある。そして右側には、ぐっすりと眠る従兄の姿があった。そう、私は昨夜、従兄と致した。自分でも想像できない。家庭のある、しかも親族と、なぜこんなことになってしまったのか。久しぶりに再会したのは、祖父のお通夜だった。祖父が亡くなった日、私は悲しみよりも従兄はお通夜に来るのかという期待に胸をふくらませていた。自分でも最低だと思う。無口で酒乱だった祖父にあまり思い入れがないことは確かだ。久しぶりに会う従兄は、スーツ姿に黒縁のメガネをかけて現れた。背丈は180以上の高身長。こんなにもメガネが似合う人間は他に存在するのかと目を疑うほど色気に満ち、私の身体を昂らせた。隣県から一人で来たらしい。小学生と幼稚園児の息子二人、美人とは言えないが笑顔が素敵な奥さんは居ない。ただの三十路男性一人がそこに存在している。それだけでもう興奮が止まらない。絶対に知られてはいけないこの感情。妄想の中では何度も触り合っているはずの人が、何も知らず平然と微笑んでいる。目の前で。会うたび罪悪感に押し潰されそうになりながらも、抑えられない気持ちがいつも自分を嫌いにさせる。それでも、私はあなたを嫌いになれなかった。
真っ黒な誘惑 禁断ちゃん @kindan_012
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