第73話

「強引にでも、雪乃さんを捕まえてよかった」



強く抱きしめられて、司くんの胸元に頬を寄せた。



「いつも、ありがとう、司くん…」


「全然ですよ。もっと俺を頼って」




そんな優しい言葉に瞳を閉じて、その温もりを感じれば、とてつもない幸福を感じた。



例え、私からは見えないその表情が、”あの頃”のような危ない陰りを見せていても、私がそれに気付くことはない。



人の本質は変わらない。


けど、それに気付けない私は司くんの思うまま。




「…っ、あ、」



チクリと首元に痛みを感じて目を開ける。



「もうずっとシてないから」


「んっ…、ぁ…」


「そろそろ限界」



久しぶりに感じるその感触に体は震えるのに、乞うような甘い声に抗う気にはなれなかった。



そのままソファーに押し倒されて、丁寧に進んでいくその行為を、私は受け入れた。



隣の部屋で寝ている楓が起きないように、必死で声を抑え、2人だけの秘密のように身体を重ねた。

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甘噛み 甘いみつ @amaimithu

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