第72話

離れてはくっついて、司くんの舌に翻弄されて、熱い息を吐く頃には足に力が入らなくなっていた。



「はぁ、はぁ…」


「俺がいない間、ずっと楓のこと見ててくれてありがとう」


「っ、」


「いつも美味しいご飯をありがとう」


「つ、司くん…っ」


「自分を責める必要なんてありませんよ」


「…っ、」




ポロポロと落ちる涙を、穏やかに微笑む司くんの指先が拭ってくれる。



慈しむような触れ方と心が落ち着く温もり。



「司くん…」


「なんですか、雪乃さん」


「すき…」



その言葉は、気づいたら自然と溢れ出していた。



「本当に?」


「ほんと、に…、凄く好き…」


「ははっ。俺は愛してますよ」




好きなんて、思っていても言葉にしたことがなかった。



始まりが始まりだったから、少し躊躇っていたのに、一度言ってしまえば、たくさん溢れてくる。

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