著者の人生の一部としての旅を、淡々としながらも味わい深く記録した作品

本作は著者の国内旅行の体験を回想し、素朴で飾らない文章で綴られています。
記憶が曖昧な部分も含めて正直に語るスタイルに親しみやすさを感じました。「もしかしたら中学校だったかも知れません」などの言い回しが、思い出をたどる人間らしい過程を表現していました。

また細かいディテールが豊富で、「吉見百穴」の横穴が迷路状になっていることや、「飯盒炊飯の味噌汁に出汁を入れ忘れたこと」など、旅の情景が具体的に描かれており、読者がその場の雰囲気を想像しやすくなる仕組みづくりがされていて好印象でした。