我々はりんごで自分たちの記憶を取り戻すことができます

エピローグ：僕の聖域の少女

　秋。収穫だ。

　僕たちは大学の最初の学期を楽々とこなし、夏には家族たちと一緒に日本各地のいくつかの観光地に行って楽しい時間を過ごした。特に印象的だったのは、静岡県に浜松市のフラワーパークで、とても賑やかだった。僕は背が伸び、骨に肉がついたが、毎日の運動と健康はまだ僕の日課にはほど遠かったが、それでも目標ではあった。 以前はピア・アウトィングとしてしていたことがデートになり、悦子と原と一緒に昔の場所を再訪したり、新しい場所を探検して僕たちの聖域に追加したりした。

　ある日、十一月初旬で秋が深まってきた頃、僕は近所のコンビニにお使いを頼まれた。その帰り道に、僕は懐かしい通りを通りを通ることにした。それぞれの家には、秋の色に輝く木があった。

　目新しいものは何もないと思っていたが、ある家の地面から看板が出ていた。近づいてみると、女性の話し声が聞こえた。彼女は玄関の前で流暢な英語を話していた。もし静子医師が心理学のカリキュラムの一環として僕に英語を暗記させていなかったら、彼女が何を言っているのか分からなかっただろう。

　彼女は「まだオファーないの？」と言った。

　そして彼女の後ろから一人の男が歩いてきて、会話を続けた。彼らは背が高く、この地の出身ではないことは明らかだった。

　僕は明るいバラ色の漢字で『販売中！』と書かれた看板を見た。

　夫婦は、高級外車が停まっている僕道へと向かった。

　僕はすごく下手な英語の発音で「エ、エクスキューズミー、ミスター！」と声をかけた。

「はい？」とその男は日本語で言った。

「何かご用ですか？」

（理由もなく恥ずかしいをかいた）

「こちらのお宅のご主人様ですか？」

「はい、長年ここに住んでいます。ただ、あまり時間を過ごさないので売りたいと思っています。よく旅行をして、京都にもっと便利な場所を見つけました。購入に興味がありますか？」

　〜〜〜

　数日後は僕と林檎森の誕生日だった。それは学校の日で、授業は午後遅くまで続いた。授業が終わったら、祝うためにパイ屋に向かう予定だった。彼女はそのパーティーがそこではないことを知らなかった。

　歩いている時に、彼女は、「杏（あんず）ちゃんは少し前に着いたって言ってた。秋夫くんとお母さんが迎えに行ったよ」と言った。

「秋夫はいつも心に袖を通す」

「彼を責めるつもりはないよ。夏に青森にちょっと行った時以来、彼は彼女に会ってないからね。」

「彼はゲームをしながら、よく彼女にいろんな話をしてる。でも、勉強にも集中すべきだね。正直言って、彼と彼女のゲームの腕前は全然違うけど、彼はいい先生になろうと頑張ってる」

　僕たちはいくつかの通りを渡って、彼女は知らないうちに目的地の近くまで来ていた。

　彼女は言った、「やっと我々十八歳になったね～！ねえ、それってもう君は訴訟の賠償金を使えるってことだよね？」

「うん、そうだ」と僕は答えた。

「いいなあ、私も事故の補償が欲しかったよ。記憶を取り戻すのは安くないんだよね。何を買うかもう決めた？」

「うん、もう買っちゃった。怒らないでね、でもほとんどのお金使っちゃった」

「もう？！」彼女は足を止め、当然ながら不愉快そうだった。

　でも、僕がくだらないことにお金を使わないって分かっていたはずだ。

「迷わずに買うものって何？」

　僕たちは歩き続けた。

「実は、数日前に契約したんだけど、もちろんもうすぐ請求される。ほら、見てみて」

「何を…待って。」

　彼女が気づかないうちに、僕たちは彼女が通っていた道に出ていた。僕たちは同じ道を通り、小学校の頃と同じように歩道を並んで歩いた。彼女はもう一度、自分の昔の家、僕の記憶の聖域の前で立ち止まった。

　看板も、外車も、セールス夫婦もとっくにいなくなっていた。

「丸ちゃん…」

「はい、よる？」

「これは…我々の？」

「そうだ。おかえり」

　彼女は手で口を覆ったけど、驚きの声は隠せなかった。芝生に一歩踏み出し、次の一歩ごとに足が震えた。彼女は前庭の木にたどり着いた。その木は広くて目立ち、熟した黄色いりんごが実っていた。僕も彼女の後ろに続いた。

　枝の傘の下で彼女は膝をつき、幹にもたれかかって頭をつけたとき、りんごが彼女の頭に落ちてきた。僕たちは二人とも笑い出した。

「どうぞ、ミス・ニュートン、新しい重力の発見でもするつもり？」

　僕は彼女を助けて立ち上がらせたとき、玄関のドアが開いた。僕たちの家族や友達がみんな出てきて、大声で祝ってくれた。静子医師は娘のところに走ってきて、パーティーハットを頭にかぶせ、優しく抱きしめた。原、藤田、そして悦子が僕たちを中に案内してくれて、中ではパーティーの飾りとビニールの音楽が流れていた。

　伊藤医者は、修理された林檎森のカメラで全てを撮影した。林檎森の母親が娘のためにビデオを作っていたので、これらのビデオが誰のためになるのか考えさせられた。アイデアの種はあったが、今のところは優先事項ではなかった。

「「我々は我々を愛している」。」と言って、僕たちは新しい家で優しくキスを交わした。

　僕たちが十八歳の誕生日を迎えたとき、孤児院のプログラムを卒業する年齢になったので、僕たちは一緒に集まった。それは僕たちの生活の多くの思い出が詰まった場所で、初めて会った小学校の近く、再会した孤児院の近く、よく通ったパイ屋、そして僕たちの家族の家の近くだった。

　誕生日プレゼントがもう一つ用意してあった。

　彼女が前庭に座って川のように青い空を見つめていたとき、まだ少しな灰色だったが、地平線にはオレンジ色がかった部分があった。僕は彼女にキャンバスを手渡した。それは彼女がキッチンの窓から外を見ている絵で、窓辺にはアップルケーキと抹茶とトキりんごが置かれていた。窓の外には近所の秋の木々が鮮やかに描かれていた。

　彼女がそれを気に入ったのは間違いなかった。

　彼女が誰だったか忘れてしまったけど、彼女が思い出させてくれた。彼女は僕たちの旅を忘れてしまったけど、僕が思い出させてあげた。僕たちには特別な絆があり、それが僕たちを恋に落とした。なぜなら、僕たちは同様にユニークもあれば、ユニークな類似性もあったからだ。もし彼女がまた忘れても、僕が忘れても怖くはなかった。なぜなら、僕たちには思い出すための確かな方法、僕たち独自のコミュニケーション方法があったからだ。

　彼女はりんごで僕の記憶を取り戻すことができる。

　僕はりんごで彼女の記憶を取り戻すことができる。

　とはいえ、それはもっと別の、多数的な言い方で言った方がしっくりくる。それが僕たちのあり方だった。りんごは僕たちを意味していた。

　我々は自分たちの付き合いを大切にする。

　我々は我々を愛している。

　我々は自分たちの五感のりんご。