第14話「決着」
どうゆうわけか先ほどとどめを刺した敵……レオ五体満足で目の前に立っていた。蘇ったようだ。いや、実際に蘇ったのだろう。
「これまた珍妙な魔法だな」
レオは剣を拾って握り直す。
「そうか?俺は気に入っているぞ?」
それだけ言ってから間髪入れずに大ぶりの攻撃を繰り出す。その攻撃は威力も速さも前の一撃よりもより鋭く洗練された一撃となっていた。まるで生まれ変わっていたように――
―――【流星一閃】
だが、それでも男には届かない。レオの大剣が届く前に男はショートソードを水平に構え、足の魔力を集中して一歩踏み込む。その勢いと速さを持って、レオと入れ違いざまに脇腹を切り捨てる。その一撃は肋骨の間をすり抜け、心の臓を壊してしまう。
「は……やい……」
レオが剣を振り終わったころには男の姿はもうすでになくその背後でレオの背中越しに剣を構えていた。レオは二回目の死を迎えた。
二回目の爆発を起こした後、再びレオは五体満足でこちらに向き直ってきた。先ほどより魔力量や闘争の意思がよりはっきりと上がっているのが眼にめて分かった。
「そうゆう能力か……」
死ぬたびに強化された状態で復活する。シンプルで厄介な能力だ。
「まだ二回しか死んでねぇぞ。あと七回は死ねるぞ?」
全部で九回か、単純にめんどくさい能力だマジで……。男はそう思いながら長期戦となることを悟る。
「安心しろすぐに決着をつけてやる……」
レオは長丁場となることを毛嫌いし次の一撃で決めることを宣言する。
―――【
「言霊まで使い始めたか……!」
技名を叫ぶことで技の威力上げる。魔法を使う者にとっては基本的な技。言霊を使ったと同時に眠れる獅子が目覚めるようにレオの魔力はより強く、よりその圧を増す。命の残機を消費することで強化されたのだと男は考察した。
「これで俺の残りの命は二つまで減らした……さぁ、全力でかかってい!!!!」
―――【
男の使う一閃の改良版と思われる斬撃を放つ。その斬撃は獅子の形をしており、範囲が一閃より断然広く、レンガの地面を抉りながら男に迫ってくる。
「仕方ねぇな……ほんの少しだけ見せてやるよ全力を」
男は右足を前に出し両手でショートソードの切っ先を相手に向け、右肩と並べる
「ようやく全力をだ――」
レオが喜んだのもつかの間、レオの放った獅吼閃は打ち砕かれ自分は宙に打ち上げられていた。
―――【
その一撃はすべてを打ち砕き、超えて見せた。その魔力で作られた渦のような嵐はレオの体をミキサーにかけるが如く破壊していき、やがて空の彼方へと飛んで行ってしまう。
「はぁ……面倒な相手だった」
男は敵がやっといなくなったことを確信し、納刀しながらため息を吐いた。
「なんで、俺がこんなところにいんのかしらねぇけど……」
男は霧の魔法によって記憶を失ってしまっていた。
「ガキが無事そうならそれでいいや」
それでもレオと戦ったのは泣いている子供二人がいたからである。顔も名前も覚えていないし、そもそも知らない。それでも助けない理由にはならかった。
魔法による霧は晴れ、ノウノットとしての記憶が戻ってきた。先ほどまでの自分……記憶が逆行していた時の記憶は寸分たがわず残っていた。
「あ~頭痛ぇ……」
二日酔いした時みたいに頭痛と吐き気が絶え絶えもなく襲ってくる。ルカとメアリーの二人を見ると記憶を思い出した時の衝撃に耐えられなかったようで気を失っている。
思考がまとまらない中、ガヤガヤとあたりがうるさいのがなんとなくわかる。チカチカする視界の中で武装した人たちが心配そうにこちらを見ているのがわかる。あぁ、よかった救助隊が来たみたいだ。助かった……
―――☆―――☆―――
「相変わらずごっついな……」
騎士に救助される三人を建物の屋根越しに観察する人影が一つ。イトハラトウイチその人である。その目には仲間を倒したものに対する敵意ではなく、まるでヒーローショーを眺める純粋な少年のような目でノウノットを見つめる。
「さて、帰りますか」
気づかれる前にイトハラは踵を返してその場を去るのだった。組織のボス、デスモデスに事の顛末を伝えるためである。
原作の展開を破壊しつくした俺はしぶしぶラスボスになることを決意する 夜野ケイ(@youarenot) @youarenot
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