第3話 配信開始
配信する為の下地は整った。
後はジエンデのゲームアカウントを作成し、配信開始ボタンを押すだけの簡単なお仕事だ。
AD!すまん! とジエンデを起動。
壮大な音楽と華麗な映像に彩られオープニングが始まり、堂々たる存在感を放ちそのタイトルが打ち出される。
【The end of the duel】
にっくき敵の中であり俺がこれから破壊する名前だ。
待っていやがれとアカウントの制作に取り掛かった。
と言っても難しいことなど何もない。
勝敗 優劣 雌雄を決するのは全て己自身のプレイスキル。武器種それぞれに設けられた、魔法などのスキルこそ存在すれど、固有スキルなど存在しない。あるのは己の身、武器。それだけだ。
とどのつまりキャラクターデザインとユーザーネーム。それだけ決めたら完成なのである。
キャラクターデザイン。
目立つことを最優先! と普段選ばない燃えるような赤い髪を選択。
ビジュアルはいざ配信で顔を出した時に「アバターカッコつけすぎwww」とかコメントされたらブチギレる自信があるのでリアルの俺を少し美化したくらいでちょうど良いだろう。
そしてユーザーネーム。
これも目立つ看板の一つだ。だからといって相手を煽るような名前にしたら運営からBANされ俺の目標には到底届くことなどできなくなってしまう。大人しくADでも使っていた名前である【ロキ】にした。…由来?本名の【
スクリーンに映し出される赤髪の男、ロキ。
今日この時からジエンデの全てを破壊するべく駆け回る男がここに誕生した。
これで下地に続き全ての準備が整った訳だ。
いっちょやったるか! と配信開始を押すのであった。
================================
「あ。あー。声入ってんのかなこれ。」
配信開始を押したものの、表示は配信中と赤い丸の表記が出ているだけで不安になる。
まぁだめだったらだめでやり直そう! とあまり深く考えず、とりあえずプレイしてみようとゲームを続けた。挨拶なんかも必要だと動画では言っていたが誰も見ていない以上不要だろう、とそのまま進める。
なお、配信の全てを自動的に後から視聴可能できるよう動画化してくれる【アーカイブ】機能が、下準備段階でON状態になっていたことをかなり後に知る虎太郎であった。
「うーっし。まずは武器だよなー。」
と、事前調査で知っていた武具店へと向かう。
ジエンデではログイン後一律で同じスタート地点に飛ばされ、その後各施設へと赴く事でその場所に応じたコンテンツを楽しむことができる。
タイマンで己の格を高める【ソロランク戦】や、チームでの格を高める【チームランク戦】、新しい武器や戦略の練習の為のランキングに影響しない【カジュアル戦】と、様々な戦闘を楽しめる【コロシアム】。
様々なランキングや運営からの案内と、情報を確認できる【勝者の殿堂】。
そして多種多様な武具を取り扱う今の俺の目的地、【鍛冶屋街】。
の大きく分けて3つの施設があった。
移動などに時間を割くようなゲームでもない為、そこまでの距離キャラを動かさず鍛冶屋街へとたどり着いた。
己の力が全て! と言わんばかりに、現時点で全ての武器種を購入する事ができる。
両手剣は両手剣。片手銃は片手銃。火魔法杖は火魔法杖。と、各カテゴリーにつき1種類しかないのだ。
が、購入と言うだけあって全てにおいて金銭が必要となってくる。最初から全て使えたら金銭要素など必要ないのだ。
最初に選んだ武器を使い、戦う事で勝とうが負けようが資金は大なり小なり貯まる。その溜まった金でまた次の武器種を試そう。というのが王道ルートだろう。
よって、今の俺には1本買うのがやっとで選べる武器種は1種。ということになる。
…やれやれ、ADなら2種は買えるのにな。とよく分からない張り合いをしながらも選ぶ武器は決まっていた。
片手剣。
王道にして至高。全ての始まりにしてオールマイティ。
かの某冒険ゲームの勇者ですら、最初に手に持ちスライムを叩いた木の棒も片手剣カテゴリ(諸説あり)、勇者の剣として最後まで寄り添った剣も片手剣なのだ。
迷う事なく片手剣を店で購入。
-馴染む!
とひとりニヤついていると、いつの間に来ていたのか、配信用に接続したデュアルモニター。その画面端にあった現視聴者数が0では無くなっており、コメントが付いていた。
◎視聴者数 32人
>初見〜
>お。新人さんか?
>つかなにこのチャンネル名。
>コメ見てないのか。配信初心者かー?
>初見
>うっせやろ
>は?この時代に片手剣?
>草
>冷やかしなら他でやってなー?
>無謀なバカがいたって拡散してこよ
>片手剣は草
>このゲーム最初1本しか武器買えませんよ!
>バカがいると聞いて
>ほんまにばかおるやんwww
>片手剣で凸者ボコすってマジ〜?www
聞き捨て…いや、見捨てられないコメントがあったな…?
片手剣こそ至高であることを見せつけてやらねばなるまいか。
サービス終了間際なゲームで天下を取っていた俺、サ終の原因となったゲームを破壊する。 蒼 @sora_21
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。サービス終了間際なゲームで天下を取っていた俺、サ終の原因となったゲームを破壊する。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます