我が実兄について。

ハマハマ

ちょっと変わった我が実兄

 完全にワタシと同じ遺伝子を持つ我が兄は、実弟のワタシから見てもなかなか変わっていると思う。


 ただし、その変わっている点は全くもって悪いことではなく、そのほとんどに見習うべきところが多々ある。

 けれど、いやそうでもないかと思いつつぼんやり眺めてウン十年。


 それでも幼い頃は憧れを持った様な時期があった様な、やはりなかった様な。



 実弟から見た変わり者の兄。

 そんなエッセイをサラリと尻まで読んでみて、『変わってる』いや『普通だよ』、そんなひとこと置いてって頂ければ幸いでございます。




◻︎◇◻︎◇◻︎◇◻︎◇◻︎


 二つ上の実兄は、幼いワタシから見るとなんでも出来た。

 運動神経もバツグン、成績も良かった。

 当時のワタシにとって絶対的な存在だった。


 確かワタシが小3の頃。

 作文で家族のことを書け、と宿題が出た時に兄のことを書いた。

 しかし担任からは「お兄さんのことじゃなくてマラソンのことだね」と評価を受ける。


 当時小5の兄は雨が降ろうが雪が降ろうが台風だろうが、毎朝6時から数十分の――ジョギングというよりはよりハードな――マラソンに出ていたのだ。

 そしてごくたまに付いて行った際のことばかり書いた故の担任の評。さもありなん。


 一年間毎朝走ると決めた兄は、断固として休まず走った。

 大雨の中、今日くらい休んでくれと懇願する母親を振り切り走るほど。

 いま思えば――いや当時もそう思ったが――かなりアホだ。


 そして、そのマラソンのおかげかめちゃくそ脚の速かった兄は小6の時、運動会のリレーで無双した。ビリでバトンを受け取った彼の脚は、他とは隔絶した速さだった。


 ワタシはぶっちゃけ痺れた。カッコ良すぎた。

 兄が蹴った地面の砂は、彼がそこから十メートルほども離れてから弾けて舞ったような記憶が鮮明にある。


 実際にトップまで追い付いたかどうかの記憶はすでに失われているが、『あれ俺のニーチャンや!』などとクラスメイトに吹聴した覚えまである。


 だがしかし、ワタシが中1になるとまたこれが違うわけだ。

 二つ差、というのが問題であって特に兄に問題がある訳ではない。


 やや特徴のある姓を持つ我々は、地元では一目瞭然の兄弟。

「おぅ、ハマ兄の弟やんけ」


 兄、陸上部。

 ワタシ、バスケ部。

 けれど二個上三年生の先輩方は兄の同級生。

 名前と存在を覚えられてしまう訳だ。


 学年別の5vs5するから一年からも5人選ぶぞ、となったらハマ兄の弟ことワタシが五人目。

 

 スラムダンクブーム絶頂期のため4、50人いた一年の中から下手クソなワタシ。

 ワタシを除く4人は上手い。付いていけない。

 これは辛かった。


 でも誰も悪くない。当然兄も悪くない。

 だから今となっては平気。

 でも当時は辛かったなぁ。

 


 そしてその翌年。

 弟に対して無茶苦茶な要求をする様な兄ではなかったけれど、高校で合気道部に入ったお陰で練習台に選ばれる。


「おいハマハマ。ちょっとここ掴んでみ」


 言われるがままに彼の手首を掴むと即座にワタシの視界は天井、壁、そして天井。

 途中に床も見えたかもしれないけどワタシの記憶ではそうなっている。


 でもまぁ別に、彼の練習に付き合ってやってると思えばまぁ平気。そこまで目くじら立てる事でもない。

 特に腹を立てる訳でも仲が悪い訳でもない。

 第一に、我が実兄は変わっているよなと言いたいだけのエッセイであって愚痴とかそんなんじゃない訳だから。




 そんな兄の、変わってるよなこの人ホント、と思うNo.1がこれ。


 我が実兄が、めちゃくちゃが大好きな点だ。


 全ては好奇心と向上心、さらにはクソでかい瞬発的行動力の成せる技。ゆえに何にも悪いことではない。


 高校生時の兄は合気道部に席を置きつつも、公園で夜な夜な拳法を訓練する集団があると聞きつけ自転車チリリンで駆けつけ教えを乞うた。


 明らかに人見知りっぽい兄が、習い事だけやたら積極的になるの、一体なんなの。

 そう思いはするものの、彼の習い事熱は留まることを知らない。


 地方の大学に通っていた頃には形意拳(という中国拳法)を習う為に門戸を叩き、先ずは太極拳を一年やれと指示を受けて通い始める。


 実際のところ未だになんなのかよく分からないけれど、数ヶ月後には意識するだけで手のひらを熱くするという謎技術を習得。

(ただし就職だか卒論だかで忙しくなり形意拳までは習うこと叶わず。)



 そのままその地で就職した兄は、カポエイラ道場とテコンドー教室に通う。

(一度兄の家に遊びに行った際にはどちらにも連れて行かれて、カポエイラの方では体験させて貰った。ちょっと嫌だった割りには面白かった)


 さらに同時期、ブレイクダンスに興味を持った兄は、最寄駅の周りでたむろして踊る若者たちに声をかけ、再びまた教えを乞うた。


 そしてしばらく高校生たちに習った兄はやっぱり面白いと感じ、隣街まで車を飛ばしてブレイクダンススクールに通う。

 その頃地元に帰ってきた時に、ワタシに見せようといきなりアスファルトでウィンドミル(首だか背中だかでクルクル回るやつ)をした際に頚椎を痛めて入院 & 手術……



 とまぁ、そんな習い事バカの兄もずいぶん前に結婚し、子供も生まれて落ち着くかと、思いきや。


 今もブレイクダンス、ドラム(楽器)、発明サークル、パルクールに通い、さらに飼ってるカメレオンの孵化にも成功しただとか。



 見習いたくもあり、かつ見習いたくないほどの、見習いようのない行動力。

 羨ましいような、羨ましくないような。


 昔からそんな兄。

 実弟から見ると、やはりずいぶんと変わっている様に思うがどうだろう。


 皆様がたの身内にこんなの、居ます?



【おしまい】

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