新人の頃の失敗!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 20代の中頃、広告代理店で広告の営業をしていた頃の話。その時、僕はまだ初受注が出来て間がなかった。営業未経験からの転職、営業経験は1ヶ月を超えたところだった。なのに、テレフォンアポインターさんが取ったアポに行かされた。おそらく、土曜のアポだったからだろう。


 アポに行ってみた。中小企業。採用責任者は社長。社長は、“今まで、どうやって人材を確保していたのか?”わからないくらいに、求人広告のことを知らなかった。僕は、持って来ていた見本誌を社長に渡した。見てもらう方が早い。


「広告のサイズがいろいろあるんだな」

「はい、こちらに枠と価格の一覧表があります」

「お! 1万5千円からあるじゃないか」

「はい、1番小さな枠で1万5千円です」

「もっと高いと思ってた。なんだ、安いじゃないか、じゃあ、ウチは1万5千円で広告を出すよ」

「いえいえ、ご覧ください、枠が大きい方が多くの情報量を載せられます。今回の求人が、例えば、人気職種の一般事務でしたら、1番小さい枠でもいいでしょう。ですが、今回は不人気職種でこの給料、或る程度の情報を盛り込まないと応募は来ないと思いますよ。1番小さい枠でしたら、情報量が足りません」


「君は営業だから、高い大きな枠をすすめるんだろう? その手には乗らないよ」

「いえいえ、そういうことではないのです」

「1万5千円の枠で効果が無かったら、崔君のアドバイスを聞くよ。だから、1番小さい枠で頼むよ」


 断りたかった。だが、このアポはテレアポさんが取ったアポ。受注できなければテレアポさんの実績として認められない。結局、僕は1万5千円の申込み書をもらって帰った。


 結果は予想通りの応募ゼロ。社長は言った。


「もういい、この媒体は2度と使わない。君にも頼まない」

「今回で失敗したら、私の意見も聞いていただけるというお話だった思いますが」

「来なくていい! 君には頼まない! ……ガチャ!」



 電話を切られた。理不尽だ。だが、やっぱり“無理だ”と思ったら断ろうと思った。







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新人の頃の失敗! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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