第46話 エピローグ



「というわけで王政が廃止されて貴族の特権階級もなくなって、今の民主主義なレア国になったってわけ」


 酒屋のカウンターで男が歴史を語り終えると、若い女は退屈そうに欠伸をした。男は焦った。


「あれ、つまんなかった?」

「んー…要は王子様は平民として暮らすことになって、革命は大成功だったって話でしょ」

「まあざっくり言うとね」

「あたしだったら、わざわざ王族やめたりしないけどな。だって甘い物とか何でも食べ放題でしょ」

「甘い物好きなの? じゃあ、角のケーキ屋行く? 驕るからさ」

「え、いいの? やった」


 男はいそいそと女と一緒に、酒屋を出て行った。店主は「ありがとうございました」とカウンターで皿を拭きながら見送り、端の席に座っていた吟遊詩人に苦笑する。


「あんた方も大変だねえ。最近は詩にするような英雄もいなくて。古い詩ばかりじゃ飽きられるだろう」

「確かに商売あがったりですが、英雄がいないのは平和な証拠でもありますよ」

「ハハ、そうとも言えるな。ありがたい時代だよ。……なあ、あれ歌えるかい。リオネル王子が英雄ヴァルクと一緒に、海賊をやっつけたやつ」

「ええ、もちろん」


 吟遊詩人はリュートを掻き鳴らし始める。誰からも愛される、英雄譚を口ずさみながら。



END

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革命の英雄は、堕落王子にガチ恋中。 カギノカッコ @kaginocacco

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