第4話
この国には、到底手の内では数えられないほどの「山」がある。
我々【山狩り】は、その「山」全てを登頂する。そう、山を狩り尽くす。それ故に、山狩りなのである。
第四話 転変地移
「はぁ…もう日が沈んでるよ…」
約1ヶ月ぶりの休暇を貰い、有意義な1日を過ごそうと思っていたのだが…
「まぁ、起きたのが昼だしな…そこから買い出しに行って…とか考えると、そりゃ日も沈むか…」
「…あれ?山田じゃーん!何してんの?買い物?」
歩いていると偶然、同期の園田に遭遇した。
最初はさん付けの敬語だったのだが、距離が近づくにつれ自然と抜けていった。
「1ヶ月ぶりの休みだったから色々やろうと思ったのに、もうこんな時間だ…」
「あっはは、そんなもんだよね〜!てか、休み1日だけなの?1ヶ月ぶりなのに?」
「あぁ…」
「うわぁ…」
園田は同情なのか、ドン引きとでも言いたげな顔をした。
「ま、まぁなんか辛かったら言いな?相談乗るからさ…」
「…そういう園田は、明日も休みなのか?」
「ん?私も仕事だけど」
「じゃあなんでそんなに元気なんだ…?お前も同期なら私と休暇の数は同じ…」
園田は顔を逸らした。
とても、とても顔を逸らした。
「そ、そーいえば今日満月らしいね!?」
話題も逸らした。
「…そうだな」
「ま、まぁ…ね?ほら、途中まで一緒に歩こ?」
「…あぁ」
少しだけ気まずい時間を過ごし、そろそろ家に着く頃。
その時。
「…地響き?」
「は…?怪獣!?」
「いや…怪獣が出る時にはどこかの山が盛大に崩れるはずだ…なんだ…?」
地面が揺れる。それも、何者かが下から叩きつけているように。
「…だっ…!?」
園田が空に打ち上げられる。
「園田!」
幸い、エンジンが無くしても届く距離だったため、どうにか私が受け止めた。
「何事…!?」
「何が起きているんだ……あ」
「え、なんか知ってんの?」
私は思い出した、以前上司に教えてもらったことを。
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「怪獣というのは、1つの山には滞在し続けない。栄養も何もかも無くなってしまうからな」
「…怪獣は山の栄養を取っているのですか?だとしたら、なぜ山から緑はなくならないのでしょう…」
「それは我々も未だ解明できていない…ただ、山から栄養が無くなったあとの行動については解明できている」
「大移動だ」
「大移動?」
「あぁ、怪獣には、何故かは分からないが滞在する周期がある。そして、全ての怪獣がその周期が同じ…期間が被っていると言うべきだろうか。つまり、一体の怪獣が移動を始めるということは、全ての怪獣が移動を始めるということだ」
「そんな…そんなことしたら、とんでもない地響きが起きてしまいます!」
「あぁ、公には伏せられているが、10年ほど前にあらゆる建物が崩壊しただろう」
「えぇ、私もまだ小さい頃でしたが…」
「…そういうことだ。そして、その事象に名前をつけることにした。」
__
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「"転変地移"…」
「てんぺんちい?」
「あぁ、ついこの間、上司が…山本さんが言っていた。怪獣は一定の周期で大移動を起こし、住処を変えると…」
「みんな仲良くお引越しするってこと?」
「あぁ、そういうことだ。そして次の山、次の山へと移動し、栄養を蓄え体積を増やす。ただ、一定数、何かの原因で移動できない者もいるらしい。そういう奴は脱皮不全のような状態になる…私も以前そのようなものを相手にした」
「じゃあ、もっと怪獣が強くなっちゃうってことだね…」
「あぁ、だから我々は、素早くこの国から怪獣を消滅させないといけない。いずれ、奴らがこの国を壊す可能性がある」
「…頑張ろう」
「おう」
「…揺れ、収まったみたいだね」
「あぁ、帰るか」
第四話 終
山狩り 金木犀 @kinmokusei_GL
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