第3話

この国には、到底手の内では数えられないほどの「山」がある。

我々【山狩り】は、その「山」全てを登頂する。そう、山を狩り尽くす。それ故に、山狩りなのである。


第三話 異常事態


「新人の峯田 登です!よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします。それじゃあ、早速だけど、実際の訓練に取り掛かろうか」

「は、はい!かしこまりました!」

我々は、そこまで大きくない手頃な山へと向かった。

「さて…とりあえず山頂まで登ろう。」

この山は登山を始めたばかりの人がよく立ち寄るため、道が整備されており、幸い足が痛くなることもなく山頂へとたどり着いた。

「よし…大丈夫か?整備されているとはいえ、山登りは初めてだったろう?」

「はい…なんとか…まだ行けます…」

息を上げた新人に心配の目を向けながら、次の行動に移る。

「さて、あとは旗を刺して……ん?」

私としたことが、新人指導というタイミングで旗を忘れてしまった。

「すまない、峯田くん。旗を忘れてしまったみたいだ…今どうにか対応するから、待機していてくれないか?」

「わっ…かりました」

新人がどこか引っかかるような返事をするも、私は気にせず本部に電話を繋げる。

「…はい、旗を忘れてしまって…誠に申し訳ございません…」

私が電話に気を取られているうちに、新人はなにか行動を起こしていた。今思えば、私の管理不足に過ぎなかった。

「旗じゃなくても…この棒とかなら刺さりそうだけど…まぁでも、記録だから旗がいいのかなぁ…?まいいや、とりあえず達成感としてこれは別として刺しちゃえ」

その瞬間、地響きが起こる。

「…!?申し訳ございません!急用のため一度切らせていただきます!」

本部にそう伝えると、私はすぐに電話を切った。

「峯田くん!何があった!」

「わかんないです!!」

「とりあえず離れるぞ!ちゃんと掴まれ!」

エンジンに慣れてないであろう新人の代わりに、私が彼を掴み、瞬時に山から離れる。

「なんだなんだなんだ…!?しかも何かおかしい…怒っている…!?」

私は怪獣の頭に目をやる。するとそこには、少し尖った木の棒のようなものが刺さっていた。

「…ん?峯田くん。なにか棒を刺したりしたかい…?」

「え…あ、はい!旗は無いけど、棒を刺して達成感でも、と思って…」

「…すまない、説明不足だったな。旗はただ怪獣に刺激を与えて呼び起こす訳では無い。最大限まで痛みを無くし、デコピンほどの刺激に抑えた結果、怒らせずに呼び起こせるのだ。ただの木の棒を刺してしまえば、怪獣が怒ってしまう…」

「なるほど…」

説明を終えたのも束の間、山の破片が飛んでくる。

「とりあえず!奴を沈める!私に着いてきてくれ!」

「は、はい!」

エンジンをふかし、怪獣の頭へと向かう。そして、即座に木の棒を抜き、傷口を抑える。

「すまなかったな…」

追いついた新人と共に、怪獣の腕へと向かう。

周りに被害を出さないよう、腕を切り落とし、物を投げるための力を無くす。

他の怪獣と比べて長い尾も切り落とし、無防備な首へと向かい、新人との同時攻撃で瞬時に頭を落とす。

「よし…これで任務は完了だ。今後は念の為、全ての行動を質問してから行うように」

「申し訳ございません…」

「幸い、街に被害は及ばなかった。優秀だと誇っていい」

「…感謝いたします」

その後、我々は本部に戻り、新人は正式に山狩りとなった。



「これでやっと…職にありつけた〜!」

「良かったな…あ、そうだ。今回の報酬額、言われたか?」

「あ、はい!10万円ですって!凄いなぁ…命懸けだったもんなぁ…」

「……あぁ、良かったな」


第三話 終

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