呼吸的人生

@iwaishiganseki

呼吸的人生

体が窮屈だ体勢を変える。と言うか俺は何をしているのか。全くわからない。目を開く見覚えのない光景。どうしてここにやってきたのか自分の記憶がない。ここはどこなのだろうか今、自分の目の前には壁があり左右にはおびただしい数の人間が雑多に佇んでいる。空の明かりでかろうじて確認できる。そして背後には僕が寄りかかっていた壁、というある種の閉鎖的空間の中に僕はいる。理解はしているがただいきなりの事だったので訳が分からない。頬をつねるが現実には変わりないらしく。「痛っ」と声が出てしまった。人間たちは何の反応もない。彼らは一つの方向、僕から見て左から右を向いて並んでいる。先の様子を伺うとと横2列、いや4列かと思ったら3列のところがあって、何数列かに並んでいる。また彼らは動いていない。というか動かない全員彫刻か何かなのか。と思ったが触らずとも感じる生温かさがあった。人々が呼吸しているのも何となく分かる。生きてはいる確信を得て周りを見渡す。左の少し離れた所に見覚えのある顔が見えた。壁と人間の隙間を広げたりはせず。なるべく迷惑をかけないように横を向き、自分の鼻息すらも相手には気にさせないよう呼吸を意識して進む。目の前まで近づき。観察をする。やっぱりと確信に変わる高岩だ。しかし相手の反応はない、誰も声を発さずにいる中で自分が声を発するとどうなるかも予想がつかない。しかし今の状態では気が狂いそうだったので勇気を出して。「高岩ー久しぶり」と呼びかけてみる。意外な反応だった。彫刻のような男が滑らかな状態変化と共に「よう中学校ぶりだね」と返して来た。私はあまりも気になることが多く色々と質問してみようと考える。この男さっきから周りの異様さに興味を示すこともせずに何か喋ろうとする僕を気長に待ってる。高岩からも不気味さを感じる。とりあえず質問をぶつける。「ところでさここはどこなんだ。目が覚めたらここだったんだ。」彼は感情のない機械のようにわからないと言うことを説明する。「僕にもそれはわからないんだ。ただ何となく中学校を卒業してから。ここにいる。」中学校を卒業だなんて何を言っているんだ。そんなの7年も前の話だ。「それって中学校じゃなくて大学とかじゃないのか。」少し彼は僕をおかしいと思ったのか「何を言ってるのと」と笑う。僕は彼が笑った事に焦った。何かしら知っていておちょくっているのかと思った。「どうしてそこまで落ち着いていられるの」微笑みながらも「わからないけど魚にとってのここは水みたいなものなんだよ」ますますこんがらがる。人にとっての水?「意味がわからないよ」彼は考え説明することを楽しんでいるようだ。「もっと詳しく説明すると鳥にとっての卵かな」訳がわからないことばかり言ってくるが、彼には自分の説明に納得した答えを持っているようだ。ますますここがどこなのか気になり出した。「もういいよ他の人に聞くよ。」高岩は僕を引き留める。「ここにいる人たちはみんな嘘をつくよやめておきな。」彼はやっぱりここに詳しいようだ。「何でそんなことが言えんだ。と言うかお前怪しいな中学以降の記憶がないんだろ。」「中学校以降なんて呼吸をしていただけの時期さ今だって呼吸をしているだけの時期さすぐ忘れる。」やっぱりわからない。しかしいちいち気にしても話は進まない。「じゃあここは危険なのか。」最低限の事を確定させておく事にした。「危険な訳がないここにいれば一般的な死が待っている。」僕は安心した「じゃあここにいよう。」周りの人間たちと同じように左から右を向いて何もせずに並ぶ。大切な時間が過ぎていく。視界の変化のなさに飽きていた時。空が薄暗くなり横の壁が動き出す。今感じているのは絶望で、人間の作った災害に私は怒りを覚えこれからも怒り続けることを予感してる。こんな事を口にするべきではないが最後に明るさを残したい。「オワタ。」

二つのビルの間は今狭まっている。ビルを箸のように扱う小太りな年寄りは、ビルの間の人を傷つけないよう。ビルという箸を優しく扱い箸の間の人を口に運ぶ。その中には高岩や僕もいる。大抵の人間は喜んで両手をあげている。

何だか今となっては全てがわかった。さっきまで状況が理解できずに、高岩を質問責めしてしまった事を申し訳なく思う。次々と飲み込まれる人間達。ここにいれば問題なく終わる全てが。社会って最高両手をあげる。

あれからどのくらい経っただろうでかい老人のケツからクソとして排出された僕。ドロドロで臭くなっていた最後こうなるのか。思えば口に運ばれたときなぜあんなにも喜んでしまったのだろうか。今になると全てが虚しい思い返すと過去は全て呼吸をしていただけだ。こんな事を世間に訴えても誰も気にしない。僕の人生は虚しくなったのに。あの閉鎖的空間から抜け出していたならば別の可能性もあったのだろうか。まあ社会にとっての呼吸みたいなものだ。仕方がないのか。僕は幾らかの金を頼りに余生に過ごす事にした。〈完〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

呼吸的人生 @iwaishiganseki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る