第9話

「なんだかすっきりした顔をしてますわね」


「うーん……まあ、そうだね。でもちょっと気にしてもいる。余計なこと言ったかなって」


「よくわかりませんが……。その程度で終わる縁ならそれまでですわ」


「さすが潔い。そういうところ好きだな」


「あなたはまたっ! そういうことばかりっ!」


 またしてもぷんぷん怒りはじめたクリスタに謝りつつ、ルナはゆっくりと足を進めた。

 なんだか立ち止まっていたくないのだ。

 今は一歩でもいいから前に進みたい。


「いやぁ……それにしてもこれからどうなるのか。ある意味この世界の神的な? 存在に喧嘩売ったわけだし」


「……意味が全くわかりませんわ」


「気にしない気にしない」


 まあ今後がどうなるか。

 それがわからなのが面白いのだと頷いていると、どこからともなくデリック、アッシュ、レオナルドが走り寄ってきた。


「ルナ! 大丈夫かい? なんだか胸騒ぎがして……」


「なんでいつものところいねぇんだよ!」


「探しました。姉様……、ご無事でなによりです」


 ルナの身になにが起こったのか彼らは知らないはずなのに。

 この世界に生きるものとして、なにかいいしれぬものでも感じとったのか、三人はとても不安そうに見つめてくる。

 どうやら心配をかけてしまったらしく、ルナは首を振った。


「大丈夫、なにもないよ。今日は気分を変えてみたのさ」


「なら先言ってからにしろよ。びっくりしたじゃねぇか!」


 どうやら本当に心配をかけてしまったらしい。

 アッシュからそんな言葉がかけられるなんて意外で、ここは素直に謝っておこうと口を開いたルナに変わり、クリスタがルナの腕に抱きつきつつ答えた。


「なぜあなたに言わなくてはならないんですの? どこに行こうがルナの自由だと思いますわ」


「――あ? なんだこの女」


「クリスタ・マクラーレンと申します。侯爵家の者ですわ」


「知ってるわ! なんでお前にそんなこと言われなきゃならねぇんだよ」


「ルナがわたくしのものだからです」


「「「――」」」


 大きく見開かれた瞳六つに射抜かれながらも、ルナはまあ間違ってないからなと否定することはしない。

 一瞬時の止まった三人だったが、すぐにクリスタとアッシュの言い合いが始まった。


「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!」


「なにもふざけてませんわ。二人で一緒に田舎で暮らすと約束しましたもの」


「姉様……、本当、ですか? そんな……」


「……………………ルナ?」


 三者三様の反応に、しかしルナは軽く肩をすくめるだけで足を進めた。

 否定も肯定もしない。

 これからさきどうなるか、ルナも楽しみなのだ。

 だから伝えられるのはただこの一言。


「明日も楽しみだねぇ」


「「「「なにが!?」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どうも、乙女ゲームの案内モブです。……たぶん あまNatu @natume0101

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ