第44話 女神倶楽部1
「アルシェ村、村長アランに告ぐ。救済教教皇様よりのお達しだ。ありがたく拝聴せよ」
いかにも宗教関係者みたいな服を着たやつが
やってきた。
多少は失礼のないようにと思い中に入れたが、
いきなり演説を始めやがった。
僕達がポカーンとしていると、
「頭をたれよ。あまりに不敬であるぞ」
僕達がなおもジーッと睨んでいると、
「ゲホンゲホン、なんたる不遜な奴らだ。これは教会に報告するからな。いいか、よく聞け。救済教会ではこの村に教会を建設することに決定した。このような寒村には誠にもったいない決定であろう。なお、建設費は寄進で賄う。月末までに集めてまいれ」
なおも、ボケーッとしている僕達。
いや、僕は怒り心頭なんだけど。
「あんた、帰りな」
「は?」
「俺達は別に救済教を崇めているわけじゃねえ。昔からな。なのに、言うに事欠いて教会を建設するから金を出せと?馬鹿言うんじゃねえよ」
「そうだそうだ!」
「ああ、こいつ、火だるまにしようか?」
「おお、いい考え。ファイアフレーム」
「うわっっ、なんたる無礼な輩だ、いいかその言葉飲み込むんじゃないぞ!この件は教会に報告する!」
◇
「アランさん、大丈夫?」
「いや、問題ないですよ。我々は言ってみれば賢者様教徒なんです。救済教会なんて胡散臭すぎて」
救済教会は王国の主要なというか、
ほぼ唯一の宗教団体だ。
「ですね。救済教会って、金はふんだくる癖に役に立ったことがない」
「いや、祈りがあるでしょ(笑)あらゆる苦しみを救済する祈り」
「その祈りもバカ高いからな。俺たち貧乏人には祈りも関係なかったな」
「末端はともかく、教会の上の方は贅沢三昧って噂もあるよ」
「衣装からして凄いだろ。金銀宝石贅沢に使って」
「あの杖もな。聖魔法を使うのに最適というが」
「あいつら、本当に回復魔法使えるんかな?」
「神の奇跡だ、って奴ら言うんだけど」
「ワインとかいろいろ独占してるのもどうかと思うぜ」
「ああ。多くのギルドのバックにいて、逆らうものには容赦ないって話だな」
「あと、輸送業と金融業」
「うむ。特に金融業。要するに金貸し。王族とかにも相当な額を貸しこんでるってな話」
「王族が教会に頭があがらない理由だな」
「以前、王族が徳政令を出そうとして、その王様が不審死したこともあったよな」
「ああ、噂レベルの話だが」
「おいおい、話聞いてると碌な団体じゃないな」
「そうなんですよ、賢者様。それでも、無自覚に信仰するやつが多くて」
「でもさ、賢者教はやめてくれないかなぁ」
「何をおっしゃる、賢者様。賢者様のお力は天にも届きますぞ」
ちょっと、困ったな。
なにか目線をそらせる上手い手……
ああ、あるな。
◇
「女神様」
『なんじゃ?』
「救済教会ってありますよね」
『うむ』
「なんだか評判悪いんですが、天界的にはほっといていいんですか?」
『天界はの、下々の信仰には手を出さんのじゃ』
「え?救済教会、神を崇めてますけど」
『ああ、奴らの神は妄想の神じゃ。どこにもおらん』
「は?嘘でしょ?」
『嘘ではない』
「天界的には差し障りがあるような」
『あのな、勘違いしておるようじゃが、天界は祈りを捧げるとか崇めるとかそういう対象ではない。天界は世界を管理する場所であって、日本でいうとお役所みたいなもんじゃ』
「はあ、そうなんですか。なんだか、ちょっとショック」
『じゃからの、人間の崇める神が誰であろうと、妾たちは我関せずなのじゃ。なんというたかの、信仰の自由?』
「はあ、なるほど。いや、ちょっと相談があったんですがね、こりゃ駄目だな」
『何を言い淀んでおる。言ってみよ』
「あのですね、女神教会とか作れないかと思って」
『妾が教会のシンボルとなるのか、それは無理じゃの』
「ですよねー」
『信仰の自由を歪めることになるしの、そもそも妾がそういうのに関心がない』
「じゃあ、教会のシンボルじゃなければいいのですか?」
『ん?どういうことじゃ?』
「女神様、お菓子好きでしょ?ファッション好きでしょ?」
『まあそうじゃの。というか、大好きじゃの』
「ですから、女神様に流行の発信者になってもらえないかと」
『発信者にか?それはネット的にいうと、ゆーちゅーばーとかてぃっくとっかーとか言うのとか?』
「あれ、詳しいですね」
『お主の部屋でネットをよく見ていたからの』
「あれよりももっと直接的ですね。例えばですね、流行発信地を建設してですね、女神様が綺麗な衣装を着て飲食するんですよ。あ、もちろん料理とかは腕によりをかけて」
『な、それだけでよいのか?』
「まあ、綺麗な歌とか絵画とか、印象的な建物の内外装とか舞台装置は作りますけど」
『ふむふむ、いいではないか。本当にそれだけでいいのか?』
「いんですよ!女神様、日本でも少し歩いただけで大騒動になったでしょ?」
『うむ。気持ち良かったのじゃ』
「女神様の魅力って半端ありませんから、綺麗な服を着て何か食べてるだけでも信者がつくんですよ。あ、信者っていうとちょっと誤解があるか。まあ、推しを求めて人が殺到するんですよ」
『ふむ、ちょっと心が惹かれるものがあるのじゃ』
どうやら、女神様は崇められることに慣れていないご様子。
そもそも、信仰の対象ではなく、天界では女神様が多いし、男神はじじいが多いし、信者が発生しない。
でも、女神様はそれなりに承認欲求があるようだ。
「一度、やってみませんか。何もむずかしいことじゃありません。この別荘にいても退屈でしょ?」
『うむ、確かに少し倦んでおったわ。日本が刺激的じゃったから、余計にの。じゃが、天照との約束で日本は自重しておるからの』
「その日本の環境をここに作りましょう」
『ほお。重ねて聞くが、教会とかではないのじゃな?』
「ですね。ミサなんてないし、信者の願いを聞く必要はないし、祈りを捧げる必要もないし」
『うむうむ、教会はそういうのが面倒での』
「じゃあ、ちょっと進めてみますね」
次の更新予定
30歳=彼女いない歴が賢者になって異世界をプラプラするお話~ 異世界に日本の製品を持ち込んだらチートだった REI KATO @keitakato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。30歳=彼女いない歴が賢者になって異世界をプラプラするお話~ 異世界に日本の製品を持ち込んだらチートだったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます