地雷

私にとって初めての友達、立花雪乃ちゃん。

彼女のご家族が迎えに来るまでまだ時間があったので、私たちはお喋りを続けた。

「理子さんは、どちらの中学のご出身ですか?」

雪乃ちゃんが聞いてきた。

高校の新入生なら無難な話題だろう。そこから話が広がって関係が深まったりするのはコミュ障の私にもわかる。

でも、私にとっては少し辛い話題だ。それでも聞かれたからには答えないと。

 

「私は、私立の中学に通っていたの。四葉女子っていう学校なんだけど……」

「四葉女子って、頭のいい学校ですよね?理子さん、すごいです!」

さすがに全国でも最難関として有名な名門進学校だから知ってるよね。雪乃ちゃんは素直に称えてくれる。

「でも、人間関係で悩みがあって、一貫制の高校ではなくて外部のこの高校へ進んだの……」

私の告白を聞いて、雪乃ちゃんは一転して気まずそうな表情を浮かべた。

「あ……ごめんなさい。知らずにはしゃいで失礼しました……」

「ううん、気にしないでいいよ。本当に知らなかったんだからね」

雪乃ちゃんが申し訳なさそうなので、私は慌ててフォローした。

「ありがとうございます。私も中学は私立校で、英和女学館に通っていました」

その学校名を聞いて、今度は私が驚く番だった。

「英和って、すごいお嬢様学校じゃない!」

そう、雪乃ちゃんが通っていたという英和女学館は、著名人や名家、旧家のご令嬢が通う本物のお嬢様学校として有名な学校だ。

私の通っていた四葉女子も世間ではお嬢様学校として認識されているけど、英和女学館の足元にも及ばない。生徒はごく普通の家庭の子が多かった。

実際、私のお父さんは司法書士、お母さんは主婦という家庭だ。

でも、雪乃ちゃんは微妙な表情をしている。

英和女学館も中高一貫校だ。なのに、高校は外部の通信制へ進学したということは、彼女にも相応の理由があったのだろう。

 

「実は私、成績が悪くて内部の高校に進学が出来ず、この学校へ進学したのです……」

雪乃ちゃんは沈痛な面持ちで打ち明けてくれた。

「そう……」

私はそれ以上何も言えない。一貫校で高校へ進めないということは、よほど成績が悪かったのだろう。

雪乃ちゃんは私よりもずっと才色兼備のお嬢様っぽいのに、意外な話だった。

私たちの間に重苦しい空気が漂う。

どうもお互いに中学ネタは地雷だったみたい。

「ま、まあ、もう高校に入学したんだから、気持ちを切り替えて一緒に頑張ろうね!」

「そうですね!」

私たちは努めて明るく振る舞って、少し重くなった空気を払った。

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