第4話
夜明けが近づく。
一睡も出来ないものも、辛うじて仮眠出来たものも、同等の傷心を受けて活動を再開しなければならない。
しかし、朝日が昇り、その明りが周囲を照らした時、あの悲惨な一夜が終わった事を指示していて、安らぎの感情を抱くものが多かった。
「…く、ぁ」
目を覚ますトクサ。
空を見上げて、崩れた天井がある事を察する。
彼が体を起こすと、その隣には一人の女性がいる事に気が付いた。
「君、は」
トクサは彼女の名前を口にした。
聖女・サンドリヨンである。
銀色の髪を伸ばし、長い睫毛で憂いの乗った表情を浮かばせる彼女は、他の女性よりも美しい彩を帯びていた。
「…その前に、一つ、お聞かせ下さい」
真剣な表情をしながら、サンドリヨンはトクサに伺った。
「貴方は、私達の、味方なのですか?」
その質問に、トクサは考える隙も無く、答える。
「当たり前だ、俺は、人類の為に存在する」
言葉を聞いて、サンドリヨンは安堵の息を吐く。
彼が嘘を吐いているとは思わなかった。
言葉での口約束でも、サンドリヨンはこの男を本気で信じる事にした。
「分かりました…貴方の言葉を信じます、…私の名前は、サンドリヨン」
人間としての名前は、移植時に抹消され、灰ノ聖女としての名前を与えられた。
それが、サンドリヨン。
灰被りを意味する、童話に出て来るヒロインの名前を冠していた。
「サンドリヨン…そうか、記憶した、俺の名前は、トクサ」
そう言って、トクサは自分の名前を口にした。
そして、何気なく手を差し出した、握手を求めていると悟ったサンドリヨンは彼の手を拒む事無く、両手で握り締める。
(…冷たい、こんな場所で、何時間も居た証拠だ、可憐な彼女が、寒さに凍みるなんて、許せない)
トクサは彼女の手を両手で握り締める。
包み込む様に、サンドリヨンの手を挟むと、その上から吐息を吹き掛けた。
「あの、なにを…」
トクサの行動にサンドリヨンは不思議そうに言った。
「冷たい手だ、暖めたいと、思ったんだよ」
そうトクサは言うが、彼女は可笑しそうな表情をして言う。
「私達に寒さは感じません、灰ノ聖女は、死体と同じなのですから」
悲しい事実である。
ただ、灰ノ聖女とは腐らない死体でしかない。
少なくとも、サンドリヨンはその様に認識していた。
「だからと言って…キミの様な、身を粉にして、我が身を削る人間を、蔑ろには出来ない、俺が許せないんだ、努力を重ねた手が、冷たいままだなんて」
最早、聖女とは懐疑的なものだ。
魔人の力を取り込んだ人間は、魔女とも言われるべき存在。
周囲の人間は、彼女を人では無く道具として見るものが多い。
久々に人間として扱われ…サンドリヨンは、心の中で暖かいものを感じていた。
嘗て聖女と呼ばれたヒロインは魔人に身も心も敗北しました、三百年後、人類最後の主人公は魔人を巻き込み爆発して死んだら三百年前に逆行転移して敗北しそうなヒロインを圧倒的実力で救っていく 三流木青二斎無一門 @itisyou
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