第2話 捨て猫
私はいつもの帰り道を葉奈ちゃんと歩く。
「ふぁ〜眠い〜...6時間目の道徳の授業、すぐ寝ちゃったけどまだ眠い〜...」
「葉奈ちゃん、1時間弱も寝てたの!?」
「そうなの...」
喋りながら、通路の角を曲がる。
すると、猫の鳴き声が聞こえた。
「...猫?」
「え、萌ちゃんも聞こえた?」
「うん...ここらへんで猫飼ってる人居ないよね?」
「だね。...捨て猫?」
私は急いで猫の声がする方向に走る。
捨て猫。
それは、過去の私と同じ。
助けに行かないと...!!!
「ちょ、萌ちゃんっ!?」
葉奈ちゃんも後ろからついてくる。
少し走ったところの公園の、少し木が多い場所。
みかんの絵が書いてあるその段ボールに、その猫達はいた。
「...いた。よかった...まだ亡くなってる子はいない。」
ニャァ...?
そこには幼い黒色、白色、灰色の猫がいた。
「はぁ...はぁっ...。」
そこに息を切らして葉奈ちゃんがやってくる。
葉奈ちゃんは私とは真逆で、運動がそこまでできるタイプじゃなかった。
迷惑かけちゃったかもという不安もあるが、葉奈ちゃんは気にしてないようで、猫に心配をしている。
「...猫、3匹いる...こんなに捨てるなんて、可哀想。」
「そうだね...見捨てるわけにもいかないし、私達で育てる?」
「いいね!」
これが、私達と猫の生活の始まりだった。
◯―――――◯
俺は、毎日の様に「英雄なのに弱い」と叩かれていた。
名前の割に俺の性格は泣き虫だったからだ。
こんな俺には誰も救えない。誰も助けることができない。
俺はいつの日か不登校になっていた。
親も不登校の経験があった。
俺は学校を休んで、ただゲームをする気力も、漫画を見る気力も、勉強する気力もなかった。
永遠と毎日泣いていた。
母は俺に言った。
「貴方にはその優しさがあれば十分。いいところだけ伸ばしてもいいのよ。」
時が経ち、不登校になって3年経った俺はもう15歳だった。
ある程度精神は回復し、フリースクールにも行くようになった。
優しさも毎日欠かさず。
そんなある日の事だった。
母に任されたゴミをゴミ捨て場に片付けに行った8時40分。
この時間帯は皆学校に行っていて、近所の人達しか見かけない。
そんな時に聞いたのだ。
猫の鳴き声を。
「...猫。しかも3匹いる...。」
母は大丈夫だが父は動物アレルギーだ。
俺は助けても父が苦しくなる。
どうすればいいかわからなかったが、動物も人と同じ。全てを助けれなくて何で英雄という名前にならなかったのか。
「...俺は、助けるかな。」
猫のいる方向に歩いていく。
捨て猫。
それは、過去の俺と同じ。
同級生に見捨てられた俺と、捨て猫。
これが、俺と猫の生活の始まりだった。
恋愛が嫌いな女の子 空野 猫 @soranoneko
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