なこそながれてなほきこえけれ

@sasa930

第1話

南北朝より奈良よりなお離れた、長きに話されるnarrative(物語)なり。


何時の時にか、涙を失くしたように何をも聞き流し、何にも泣かない何者かがあるなり。名をばナルキッソスとなむいいける。なめげなる行いに突き放され、悲しむ女はナルキッソスを名指し、「なれが何者に情(なさけ)をかけても、何も叶うことのないように」と言い放つ。


夏の昼中、凪ぐ水面(みなも)にナルキッソスはなまら艶めかしい形(なり)を眺めて謎めいた。


アテナになぞらえられるnasus(鼻)、αυχένας(うなじ)は華やかで、何もかも兼ね備える何にも並び立たない懐かしい仲間に靡き、撫ぜたい寝したい懐きたい、いかなる思いも雪崩をなした。

何も為せず嬲られる中、何と、汝もナルキッソスなりと納得した。何故離れていないのか、何故放たれないのかと嘆く。なお熟れぬ少年はさいなまれ、萎びてしなだれ、なやみ、亡くなり、後には儚い花となった。

而してNarcissus(スイセン)をナルキッソスの名でいうなり。

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