少し立ち止まって、振り返ってみる

誰しもに同じ顔を見せる。
なんて事は出来ないのかなと思います。人間なので。その時、その相手によって自分が見せたい顔をする。

どれもが自分だと思いたい反面、どれが本当の自分なのかを探りたい思いもある。

本物か偽物か。既製品か受注品か。

悩み悔やみ生きていくことこそが、人間に許された特権なのかもしれませんね。


突如として、闇の空間で目を覚ます主人公。ここで、とある選択を何者かによって突き付けられる。
今の人生を記憶と共にリセットしてやり直すのか、それとも、ここでの記憶をリセットして人生を継続するのか。
困惑する主人公は人生のターニングポイントとなった場面の回想を始めるのだが……。

人生とは選択の連続によって積み重ねられるものだと思います。後悔のない生き方。
したいですけど、そうはいきません。

本作では、主人公である男の回想を一緒に見つめ直すことで、幾つもの思考の末に選んだ道というものに疑問を持つことになります。

誰しもが共感でき、誰しもが不安に思うこの先の道について。

写実的な表現やエピソードを通して、厳しくも、優しく突きつけられるのは責任や覚悟。

自分の選択とは本当に自分が選んだことなのか、外的要因によって選ばされ続けた結果が今の自分なのではないかと、本当にそう思えてくるような言葉の力強さをひしひしと感じました。

この生き生きとした言葉たちが紡ぐ、とてつもない没入感を味わいつつ、男がどんな選択をするのか。
その選択の果てに生まれる一つの答えとは。
是非、お楽しみください!

素晴らしい作品をありがとうございました。

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