影は祠へ、僕はテディベアを抱く

阿井 りいあ

第1話


 木々が生い茂る真っ暗な夜の森が画面いっぱいに映し出されている。

 さわさわという葉擦れの音だけが聞こえ、どことなく不安になりかけた頃、画面下から三人の男女がびょんっと飛び出してきた。


『はい、皆さんどうもこんばんは。オミナスチャンネルへようこそ。今日はですね、S県にある有名な心霊スポットを生配信でご紹介いたします……』

『絶対に行ってはいけないスポットだってコメントがたくさんあったよね~』

『そうそう。それってつまりさ、行けってことっしょ?』

『ちょっと、せっかく俺が怖い雰囲気作ってやったのにお前らときたら!』

『登場の仕方の時点で怖い雰囲気なくなってたじゃ~ん』

『それはそう!』


 最初に恐ろしい雰囲気を演出しておきながら、出演者はどこまでも陽気だ。

 しかし彼らは、むしろそうした明るい振る舞いをしてくれるからこそ怖がりでも見ていられると評判のホラー系動画配信グループだった。

 今もコメント欄はファンからの言葉で溢れており、次から次へと流れている。


 岡崎、南、中川、須田という四人の頭文字をとってオミナスチャンネル。

 ついでに「不吉な」という意味を持つ英単語になるということから、ホラー系チャンネルにピッタリだというのがチャンネル名の由来だそうだ。


 動画に映っているのは主に三人。

 熊のような大男の岡崎と、髪をピンクに染めたきゃぴきゃぴ女子の南、それからボーイッシュ女子の中川だ。大人しそうな眼鏡男子の須田はカメラマンだった。


『で、今日は何をするんでしたっけ? みなみん』

『なんと~肝試しでぇす』

『こっわ』

『なかちー、絶対こわいとか思ってないでしょ! 鋼の心臓持ってるんだから~』


 きゃぴきゃぴした様子で動画のメンバーは今日行うことを説明していく。


 心霊スポットとなっている廃旅館をぐるっと巡り、一番怖いと思う場所に南の私物であるテディベアを置いてくる。

 その場に定点カメラを設置して一度外に出てきた後、じゃんけんで負けた人が一人でテディベアを回収してくるというものだった。


『ではさっそく、行ってきま~す!』


 廃旅館内はとても暗く、手持ちの懐中電灯だけでは頼りない。

 先ほどまで明るかったメンバーも、今はひそひそと声を潜めながら静かに奥へと進んでいた。


『めっちゃ和風だな。落書きがいっぱいあって荒れてるけど、昔は高級旅館だったって感じする』

『だね。さすがにドアは開き戸だけど木製だし、部屋は全部和室っぽいし~。っていうかこの床も板張りで、時々キィキィなるから怖いんだけどぉ~……』

『床が抜けないか心配だな』

『別の意味で怖いこと言わないでよ~、岡っち~!』


 そうこうしている間にメンバーは廃旅館の中庭を発見。

 全盛期はさぞ美しい日本庭園風だったのだろうことが窺えるが、今は雑草が生い茂っており、より恐ろしさを演出している。


『あれ、なんだ?』


 岡崎が何かを発見し、メンバーは彼についていくように中庭に出る。

 一か所だけ不自然に蔦で覆われた場所があり、隙間から小さな木戸が見えた。


『わ、これ……祠? なんか封印とかされてそう』

『祠なの? よく見えないよ~』

『あ、ちょっとみなみん!』


 南が祠をよく見ようと蔦を手で引っ張ると、その拍子にバキバキッという嫌な音が響く。

 同時に何か黒いものが落ちて南の大きなトートバッグの中に落ちていったが、それどころではない事態に誰も気づかなかったようだ。


 サァッと生温い風が吹き、メンバーは四人とも冷や汗をかいた。


 見ると祠の屋根が割れ、中央にあった木戸も割れてしまっている。


 しばしの沈黙が流れ、コメント欄も「やばい」の一言で埋め尽くされていく。


『これ、やばいよな?』

『わ、わざとじゃないよぉ~!』

『それでも、やっちゃったんだからあとで管理人さんに謝りに行こうね。大丈夫だよ、みなみん。みんなで行くから』

『なかちー……! うぅ~、みんなごめん~』

『いいよいいよ。反省することが大事。今はとりあえず先に進もうぜ』


 冷静な中川の発言に、コメント欄には「さすが」「かっこいい」と彼女を褒める言葉と「まじで大丈夫?」「お祓いに行った方が良い!」など彼らを心配する言葉が流れていた。


 祠を壊してしまったことで気まずい空気が流れたものの、メンバーは気を取り直して廃旅館内に戻る。

 撮影が終わり次第すぐに謝りに行くと視聴者に伝え、再び散策が始まった。


 通りがかったドアは全て開けてみたが、鍵が締まったままなのか建付けが悪くなっているのか開かないドアも多い。

 開いた部屋は全て中を覗いてみたが、どこもかしこもボロボロで埃っぽく、中に入れば床が抜けてしまいそうな有様で入ることは危険と断念した。

 すでに床が抜けている部屋もあり、抜けた床の穴が真っ暗で何かが這い出てきそうな雰囲気があった。


『うわ、今どっかでドアが開く音が……』

『え~? あたしはなんか声が聞こえたんだけど~』

『さっきから人の気配がやばい』


 動画に不審な音は入っていない。

 本当に音や気配があったのか、はたまた動画を盛り上げるための方便かはわからないが、ホラーチャンネルとしては良い雰囲気を保って撮影は続く。


『……なぁ。なんかさっきから、変な匂いしないか?』

『わかるぅ……それになんとなく空気が重いっていうか~……』

『進むほどやばい感じするね……二階はもっとやばそう。引き返す?』

『とりあえず階段を上ってみてから考えようぜ』

『賛成~。祠壊しちゃったしね……ほんと、あたしのせいで謝らなきゃだしさぁ。まじごめんね~』


 みるからにしょんぼりと落ち込んだ様子の南に、今度はコメント欄に彼女を励ます言葉が溢れ返っていく。

 南は愛されキャラで通っており、人気も高いのだ。


 ギシギシと音を立てながら階段を上がると、右手側はすぐ突き当たりになっており、目の前には客室があった。

 さっそくとばかりに岡崎がドアノブに手をかける。


『ここのドアはどうだ……? あ、開いた、うっ』

『匂いやばいっ……うぅっ、なにこれ~! 腐敗臭やば~! ここからだったんだ!』

『……須田ちゃん、室内映せる? こっち来て。今ドアを全部開けるから』


 中川の指示によってカメラマンの須田が移動した。

 腕や手で鼻と口元を覆いながら室内に視線を向ける三人が映され、開かれるドアにゆっくりとカメラのレンズが向く。


 木製のドアが開くなんとも言えないギィ……という音が、この廃旅館にいるかもしれない「なにか」に見つかりそうで、奇妙な焦燥感をかきたてる。

 効果的なカメラワークもあって、視聴者はドキドキしながら画面に張り付いた。


『ぇ……ひっ』

『なにあれ……』

『おかしいよ、こんなの』

『ぅわ……』


 突然、メンバーがそれぞれ驚きの声を上げた。

 普段は言葉を発さない須田でさえわずかに声を漏らしている。

 かと思うと急にカメラが激しく揺れ、ゴトンという大きな音が鳴り、そのまま動かなくなってしまった。

 どうやら須田がカメラを落としてしまったようだ。


 落とした拍子にカメラのライトも消えたのか、微動だにしない画面は真っ暗で、今彼らに何が起こっているのかもわからない。


 誰の声も聞こえず、ただ暗闇に無音の動画が続いた。


 コメント欄には「マイク壊れた?」「なになになに!?」「演出ぱねぇ!」などの言葉がものすごい勢いで流れていく。


 数秒が過ぎ、数分が過ぎても変わらない。

 メンバーの気配すらない。


 ようやく、コメント欄には「さすがにやばい」「これ、演出じゃなくない?」「誰か通報して!」などのコメントで溢れ返った。


 翌日。

 問題の生配信動画は運営によって消されてしまったが、すでにSNSで拡散された後だった。

 特に、最後の数分間を明るさ調整した動画は大バズりし、世間を騒がせた。


 メンバーが驚きの声を上げ、カメラが床に落ちた後。

 明るさ調整をした画面には南が持ってきたテディベアが転がっている様子がうっすらと確認できた。


 しかしそれも束の間。


 画面奥の方から真っ黒な影が迫ってくる。

 じわじわと迫ってきた影はテディベアを飲み込み、ついにはどれだけ画面を補正しても何も映らない闇だけが残った。


 メンバーは影に呑み込まれたのだ。


 ホラー系動画配信グループだったこともあり、そんな噂が広まった。


 なお、オミナスチャンネルのメンバーはいまだ誰も見つかっていない。


 ◆


 南達彦たつひこは一人で例のスポットに来ていた。


 あの動画が世間を騒がせて早二週間。

 今もまだ一部で話題に上がっているが、現在のトレンドは不倫した俳優やジェンダーレス騒動、それらに嫌気がさした人たちが癒しを求めるペンギンの散歩動画など。SNSでは流行がすぐに移り変わるものだ。


 達彦は、例の動画の騒動が下火になるのをずっと待っていた。


(流行が過ぎるのが思っていたよりもはやくて助かった)


 あの動画騒動の後、面白半分で肝試しに来たりするような奴らとは違う。

 そもそも達彦は、心霊系が好きではない。どちらかというと避けてきた人生だ。


 それでもここに来たのは、どうしても来る必要があったからだった。


 わざわざ暗い時間に来る必要もなかった達彦は、天気も良く明るいうちから廃旅館に向かったが、建物内は昼間でも薄暗く、淀んだ空気を感じた。

 それでも真夜中に来るよりマシだと思いつつ、きょろきょろと辺りを見回しながら時折キィキィと音を立てる板張りの廊下を歩く。


 油断していると床が抜けて足がはまってしまいそうだ。

 石橋を叩いて渡るタイプの達彦は、廊下を慎重に進んだ。


「あ。これが祠か……動画で見た時よりもボロボロになってるような……?」


 気づけば、廃旅館の中庭に到着していた。

 確か動画の南が壊したのはほんの一部だったはずだが、明らかにもっと壊されている。

 あの動画が上がった後、マナーの悪い一般人が面白半分でここに来て荒らしていったのかもしれない。

 旅館の建物内にあった落書きも心なしか増えている気がして、達彦は不快そうに眉根を寄せた。


「罰当たりだなぁ、もう」

「本当にな」

「っ!?」


 何の気なしに口に出した独り言が、見知らぬ声に拾われた。

 場所も場所なだけに、達彦は心臓が飛び出んばかりに驚いた。


「おっと、すまねぇ。驚かしちまったか?」


 バクバクと鳴る心臓を押さえて恐る恐る達彦が振り返ると、そこには甚平をだらしなく着崩した無精ひげのおっさんが立っていた。

 髪もぼさぼさで長く、うなじあたりで結んでいる……というより、とりあえずまとめているといった風だ。


(まるで人の気配がなかった……いや、誰もいないと思い込んでいたし、僕が油断していただけかも)


 達彦はおっさんに身体ごと向き直ると、おどおどした様子で口を開く。


「あの、貴方は……?」

「んあ? ああ、俺はここの……」

「あ、管理人さん?」

「ん? あー。まぁ、そんなとこだな」


 なんともハッキリとしない言い方だが、男はこの場所に慣れている風であったし、達彦は彼を管理人だと判断した。


 違ったとしても、そう思い込むことにする。

 だとしたら一体誰だ、なんて余計に恐ろしいことを考えなくてすむのだから。


 管理人は懐からたばこを取り出すと、手慣れた様子で火を点け、ふーっと長い息を吐く。


「坊主、お前は何しに来たんだ? まだ明るいとはいえ、一人でこんなとこによ」

「えっと……その。ご、ごめんなさい!!」

「え、は、え? なんだよ、急に」

「その祠、最初に壊したのはうちの姉で……!」


 突然ほぼ直角に腰を折り、頭を下げた達彦に男は驚いたように目を見開いている。

 達彦は頭を下げたまま、ことの経緯を簡単に説明した。


「はー、世間じゃそんなことになってんのか。悪いな、俺ぁそういうのに疎くてよ」

「いえ……その。本当にごめんなさい」

「いや、俺に謝られてもな。けど、なるほどなぁ。最近妙に騒がしいと思ってたんだよ。謎が解けたな」


 管理人はふっと笑うと携帯灰皿にたばこを押しつけ火を消す。

 笑うと片眉だけ少し下がるのがなんだか渋いと達彦は思った。


「つまり、坊主はわざわざ姉ちゃんの代わりに謝りにきたってのか?」

「もちろんそれもあるんですけど……」

「姉ちゃんを探しに来たんだとしたら、無駄足だぞ」

「え?」


 達彦の言葉を、管理人はやや強めの口調で遮った。

 先ほどまでと同じ緩い笑みを浮かべてはいるが、目が本気だ。


「祠を壊したんだろ? んなら、まー。あれだ。……たぶんもう死んでる」


 サァッと風が吹き、木々の葉擦れの音が響く。

 達彦は、気温も少し下がったような錯覚を覚えた。


 管理人は急に黙った達彦を見てバツが悪そうに頭を掻くと、弁明するかのように再び口を開いた。


「あー、気分悪くしたか? すまねぇな、だが」

「いえ。薄々そんな気はしているので。警察も捜査してくれたけど、姉どころか他のメンバーも誰一人見つかっていないですし。あれから二週間も過ぎてて、行方不明のままならもう……」


 今度は達彦のほうが管理人の言葉を遮った。

 声は少し低くなったが、なんの感情もない淡々とした声音だ。


 管理人は目を細めて達彦を見やると首を傾げた。


「……そうか。んなら、なんでお前はここに来たんだ? 謝る以外の理由、あんだろ」

「テディベア……」

「あん?」

「姉ちゃんがここに持ってきたテディベア、あれは僕のなんです。すごく大切なもので、警察からも何も落ちてなかったと聞きましたが、自分で探してみるまで納得できなくて」


 思ってもみなかった答えに管理人は目を丸くすると、少しの間を置いて吹き出して笑った。


「ぶはははっ! お前、自分の姉ちゃんよりくまのぬいぐるみのが大事なのかよ!」

「はい」


 心底愉快そうに笑っていた管理人だったが、達彦がどこまでも真面目な様子で即答したことですぐに笑うのを止める。

 そのまま腕を組んで、無言のまま視線だけで達彦に説明を求めた。


「あれは、僕が小さい頃にばあちゃんがくれたお守りなんです。勝手にこんなところに持ち出した姉なんかどうでもいい。昔から僕を虐めることしか頭にない、最低な姉なんかいなくなって清々してるくらいで……あ」


 淡々とした口調だったのが、姉の話になると急に声に憎しみが乗る。

 しかしふと我に返ったのだろう、達彦はハッとなって顔を上げた。


「なんか色々あんだな。よし、わかった。管理人の権限で探しに行くのを許してやる」

「本当ですか!?」

「ただし、こっから先は危険だぞ」


 管理人の目はどこまでも真剣で、これまでのヘラヘラとした雰囲気が消え去っている。

 最初は達彦のことをどこかからかうように見ていたが、事情を聞いたからか態度が変わったのがわかった。


 達彦も遊び半分で来たわけではない。

 この場所が、どうやら「普通」ではないということも。


 その意思表示をすべく、達彦は真っ直ぐ管理人の目を見上げた。 


「最初から覚悟の上です」

「……ふぅん? お前もこの廃旅館にある『なにか』は感じ取ってんだな? その上での覚悟か」

「あれがないと、どのみち僕の人生は波乱続きなので」


 あのテディベアはただのぬいぐるみではない。

 達彦を守ってくれるものなのだ。


 姉は「高校生にもなってまだぬいぐるみ遊びしてるの~?」とよく達彦を馬鹿にしてきた。

 けれど大切なものだということは姉にもわかっていたため、さすがにテディベアにいたずらすることはなかったのに。


 オミナスチャンネルで不思議なテディベアを紹介したい、という姉の要求をはっきり断ってからというもの、達彦への虐めが激しくなったのだ。


『弟のくせに歯向かうな』

『生意気だ』

『いうことを聞かないお前なんてなんの価値もない』


 姉の言葉は呪いのように達彦を蝕み、ずっと言われるがまま育ってきたが、テディベアのことだけは許容できなかった。

 それが許せなかったのだろう、ついに姉は一線を越えてテディベアを盗んだのだ。


 ここで姉が死んだというのなら、罰が当たったとしか思えない。


「なるほど、そういう﹅﹅﹅﹅品ね。そうだ、これ貸してやるよ」


 管理人はテディベアについて何かを察したようだった。

 納得したように頷いた後、ごそごそと古びたリュックに手を突っ込んで重そうな懐中電灯を差し出してくる。

 管理人がカチッとライトを点けると驚くほど眩しくて、達彦は思わず目を細めた。


「僕も懐中電灯くらい持ってきてますよ? それに重そう……」

「そんなか細いライトじゃ太刀打ち﹅﹅﹅﹅できねぇよ。いいから持ってけ。いざという時は鈍器にもなる優れもんだ」


 まだ明るい時間だし、ここまで強烈な明かりは必要ないとも思ったが、なんとなく持っていった方が良い気がして素直に借りることにした。こういう時の達彦の勘は当たるのだ。


「一つ頼みがある。俺はこれから祠を直すとこなんだが……屋敷の二階、奥の階段上ってすぐの部屋だ。そこにたぶん木彫りの像があんだよ。もしあったら持ってきてくれ」

「木彫りの像?」

「おう。ほら見てみろ。ここに馬の頭の像があんだろ? これと対になってんだ。もう一つの方は牛の頭になってる」


 管理人に言われるがまま壊れた祠を覗き込んでみると、恐ろしく不気味な馬頭の像が置いてあった。

 木彫りとは思えないほど黒く滑らかで、きっと古くから大切にされているものなのだろうことはわかるが、とにかく不気味だ。


「趣味悪ぃだろ? でも必要なんだよ」

「……牛と馬の頭ってことは、それ」


 一つ思い当たることがあったが、全てを言う前に管理人は「しーっ」と唇の前で人差し指を立ててニヤリと笑う。


「祠ってのはよ、神様を祀っているだけじゃねぇこともあんのよ」

「ま、まさかその祠って……」

「聞くのか? 巣窟に入る前に。俺はいいぞ? 詳しく話してやっても」

「い、いえ、いいです! 明るいうちにパパっと行ってきます!!」


 達彦の脳裏に「牛頭馬頭ごずめず」という単語が一瞬過ったが、これ以上は考えないことにした。

 獄卒だとかなんとかなど達彦は知らない、何もわからない。


 怖い話から逃れるように、達彦はごつい懐中電灯を握りしめてさっそく廃旅館の内部へと戻っていく。

 管理人はそんな達彦の後ろ姿を見送りながら一人呟いた。


「ま、あの坊主ならどうにかなるかもな。……人が壊したもんだ。人が戻した方が封じやすい。それも壊した者の血縁ならなおさらだ」


 ◆


 キィキィと相変わらず床板が軋み、達彦は慎重に歩を進めた。


「なんでこんなに暗いんだよ……まだ昼間だぞ?」


 管理人から懐中電灯を借りて良かったと心底思う。

 思っていた以上に室内が暗くて、数メートル先まで照らしてくれるこの懐中電灯であっても心細くなるほどだ。

 もしこれがなかったら、ひょっとすると目的を果たせなかったかもしれない。


「待って。明らかにおかしい。中庭に着くまでは室内ももっと明るかったのに……」


 違和感はそれだけではない。先ほどからぞくぞくと悪寒が酷く、真っ直ぐ前しか見てはいけないと本能が叫んでいた。


 床の抜けた真っ暗な穴から。

 わずかに開いたドアの隙間から。

 天井の梁から。

 得体のしれない「なにか」が這い出てくるような気がして仕方がない。


 否、這い出てきていた。


「うわっ! な、なに、蜘蛛の巣? 最悪……」


 ふと、まるで蜘蛛の巣に顔から突っ込んだような感覚が達彦を襲い、引っかかった蜘蛛の糸を振り払わんと慌てて手で拭う。

 頭を振り、手で顔を拭き、一人奇妙にドタバタしていると、視界の隅に黒い影が映り込んだ気がした。


 ──……うぅ……あぁぁ……ぁぁぁ……


「ひっ……!」


 真っ黒な影は達彦の足を掴もうとするかのように一部分だけ細長く伸びてくる。

 一瞬でぞわっと全身の毛が逆立った達彦は、パニックになりながら手にしていた懐中電灯をぶん投げた。


 ──あああああぁぁぁぁ…………………


 ゴッという大きな音とともに懐中電灯が影に命中したかと思うと、先ほどまで聞こえていたうめき声が次第に静かになっていく。


 はっはっ、という荒い息遣いと、激しく動く心臓。


 静かになった室内には、もうなんの気配も感じなかったが、達彦はすぐに動き出せなかった。

 ようやく意を決し、びくびくしながら床に落としてしまった懐中電灯を拾う。


「思わず投げちゃったけど……床の穴に落ちなくてよかった。なんだよ、あの影……!」


 悪態を吐く余裕は出てきたようだ。

 達彦はゆっくり長く息を吐きだし、どうにか気持ちを落ち着けさせた。


「鈍器にもなる、だっけ。おかげで撃退できた。……先に進もう」


 あの管理人にはどこか不思議な雰囲気がある。

 まるで、達彦のばあちゃんみたいに。


(ばあちゃんは、霊感とか、そういうのがある人だった)


 幼い頃から、ばあちゃんは姉よりも達彦のことをずっと気にかけてくれていた。

 なんでも、達彦は霊に好かれる体質なのだという。それが心配なのだと。


 良い霊ならまだしも、厄介な霊に絡まれては碌な目に遭わない。

 それを危惧してばあちゃんは達彦にお守りを渡してくれたのだ。


 持ち歩けるサイズの、よくある小さなお守りと、家に置いておく用のテディベア。


 幼い達彦のために、今は亡きばあちゃんが自ら作ってくれたものだ。

 そのおかげでこれまで大きな危険や奇妙な目に遭うこともなく過ごせているのだと達彦は信じていた。


 一度だけうっかり小さいお守りを持っていくのを忘れた時、悪霊に追いかけられた経験から達彦はお守りを肌身離さず持ち歩いている。もちろん今も持っていた。


 お守りさえあれば見えることはない。テディベアを大事にしていれば、危険な目には遭わない。

 多少よからぬ気配を感じることはあるが、気にしなければいいだけだ。


 だが、姉がテディベアを持ち出してからというもの、達彦は悪夢に魘されるようになってしまった。


(絶対に取り戻さないと)


 懐中電灯をギュッと握り直し、達彦は歩くスピードを上げた。


 二階への階段を見つけ、廊下を歩いている時以上にギシギシ音を響かせながら上っていく。

 入り口付近や中央にも階段はあったのだが、どちらも崩れて使えなかったため最奥まで行く羽目になっている。

 目的の部屋が階段を上がってすぐだというのが救いだ。


「なんだこの匂い……そういえば動画でも言ってたな」


 階段を上がるにつれ、明らかに嫌な匂いが漂っていることに気づく。

 発生源は間違いなく例の部屋だ。

 目的地に到着したというのに、不気味な終わり方をした動画を思い出してしまった達彦は、なかなかドアノブに手を伸ばすことができなかった。


 このままテディベアも木の像も見つからなかったら頑張り損だとも思うが、行かなければ目的の物があるかどうかさえわからないのだ。


 自分にそう言い聞かせ、思い切って手を伸ばす。


「遊び半分で来た動画配信者や警察は、特に何もない普通の和室だったって言っていたよな」


 姉たちは、たぶん別の何かを見たのだろう。そうでなければ、あんな反応はしない。


 ドアを開けた瞬間、強烈な腐敗臭が鼻を突く。

 生温く、べたついた風が頬を撫でた。

 異様に暗い室内。


 室内にあるはずのない、大きく黒い門。


「なん、だ、これ……」


 達彦がそう呟いた途端、黒い門の奥から再びうめき声が聞こえてきた。


 ──……ひぃぃぃぃ……

 ──……うぅぅぅ……


「っ、は……や、ば」


 ──……ぅぅうぁぁぁあああああああ!!!!


 最初はか細かったうめき声はだんだん大きくなっていき、最後には旅館全体に響いているのではないかと思うほどの絶叫へと変化する。


 ビリビリと部屋が震える。

 壁と天井の隙間から、じわりと水が滲んでいくかのように黒い影が広がった。


「っ、ひゅっ……か、ひゅ……っ」


 達彦はもはやピクリとも動けなかった。

 膝がガクガクと震え、まともに立っていられない。

 一瞬で全身に冷や水を浴びせられたかのように汗をかき、呼吸もまともにできなかった。


 それでいて、黒い門の奥から目が離せない。

 光を一切通さない、闇。


 奥から、影が迫ってくる。

 ゆっくりと、触手のように。

 腐敗臭がきつく、涙が出てくる。

 門の奥から吹く生温い風が、全身に絡みついてくるようだ。


 影がなんだか人の手の形のように見えてきた。

 真っ黒な手は、迷うことなく達彦に向かって伸びてくる。


 こっちへおいでと呼んでいるのか、お前について行くと言っているのか。


 少なくとも、達彦を求めていることだけはわかった。


「ひっ、ひゅっ……はっ、はぁっ、はぁっ……!」


 このままではまずい。きっとこうして姉たちは闇に吞み込まれたのだ。

 達彦は無理やり呼吸を整えると、震えた手で懐中電灯を持ち上げた。


 門の奥を照らす様に腕を伸ばすと、影は一瞬だけ怯んだようだった。


 ──きぃぃぃぃぇえええええええええ!!!!


 それが気に食わなかったのだろう、悲鳴には怒りが滲んでいるのを感じる。


「うあ、ああああああっ……!!」


 今度は懐中電灯を離すまいと、達彦は握る力をさらに込めて目を瞑ったまま狂ったようにぶんぶん振り回す。


 何かにぶつかったような感触はなかったが、突如叫び声がうめき声に変化した。


 ──ぅぐぅ……あぁぁ、ぅぅぅ…………


 ちらっと目を開けた達彦が見たのは、床に落ちたテディベア。

 最初からここにあったのか、どこからか出てきたのかはわからない。

 達彦は反射的にテディベアを拾い上げると、ぎゅっと抱き締める。


 ばあちゃんから、勇気をもらえた気がした。


 実際、達彦の心はかなり落ち着いた。

 膝の震えも収まり、なんとか走って逃げられそうだ。


 ついでに、視野も広がった気がする。

 恐怖で達彦の目は鳥居の奥にしか向いていなかったが、今なら部屋全体を見渡せた。


(黒い門以外は、普通の和室だ……あ、あそこの床の間にあるのって)


 古びて破れた掛け軸の下に、無造作に転がっているなにか。

 人型だが頭部に角が生えている、妙に高級感ある不気味な像。


「牛の頭の像だっけ……うぅ、行きたくない。取りたくないけどぉ……!」


 像の落ちてる床の間は、あろうことか黒い門の真横にある。

 達彦は一瞬だけ葛藤した。

 しかし実に迷惑な話だが祠を壊した元凶は実の姉。

 謝罪をする立場として、見つけてしまった以上頼みを聞かないという選択肢はない。


 達彦は大きな一歩を踏み出し、思い切って床の間に手を伸ばした。

 牛頭の像を手にした瞬間、黒い門の方から勢いよく影が迫り、達彦の手首を掴む。


 それはまるで生きている人の手のように生温く、酷く気持ちが悪かった。


 ──ぎぃぃぃ、ぃ……ああああああああああ……っ!!!


 影は、達彦の手を掴んで門の闇に引き摺り込もうとしてくる。このままでは、達彦も呑み込まれてしまう。


「う、わあぁぁぁぁっ! 離せっ、離せぇぇぇっ!!」


 そこからはもう、ほとんど記憶がない。

 達彦は無我夢中で懐中電灯を振り回した。

 掴まれていた影が手首から離れたのを感じ、その隙に勢いよく部屋を飛び出す。


 走って、走って、走って。


 途中、何度か廊下の床板を思い切り踏み抜いた。

 その度に穴からは影が伸び、達彦を捕らえんとしてくる。


 壁の隙間、ドアの下、天井。

 あらゆる場所から影は伸び、だんだんと数を増やしていく。

 達彦はそれらを時に懐中電灯で殴りながら走り続けた。


「はぁっ、はっ、はぁっ、はっ……!!」

「坊主! こっちだ!!」


 もうだめかもしれない、そう思いかけた時、管理人の叫び声が耳に届いた。

 反射的に声のほうへと方向転換した達彦は、一切スピードを緩めず管理人に飛びつく。

 管理人は突進してきた達彦をなんなく受け止めると、身体を支えながら大丈夫かと声をかけてきた。


「管理人、さん……はっ、こ、これ……」

「お前、持ってこられたのか! はは、すげぇな! よくやった!」


 状況はいまだ変わらない。

 中庭はまだ明るいはずなのに、空まで影に覆われていきどんどん暗くなっていく。

 影の魔の手はすぐそこまで迫っており、今にも捕まりそうだというのに管理人は明るく笑っていた。


「笑ってる、場合じゃ……」

「いんや、勝負はついた」


 達彦が持ってきた牛頭の像を受け取った管理人は、すぐさま直したばかりの祠に置いた。


「どうぞ、お帰りください!」


 よく通る声で管理人が叫びながら両手を打ち鳴らすと、悲鳴が一際うるさくなる。

 キンキンと、耳鳴りと頭痛が酷い。


 だが、ズルズルと影が引き摺られるように祠に吸収されていくのが見えた。


 どれほどの時間がかかっただろうか。

 全ての影が祠に吸い込まれ、まるで何ごともなかったかのように空は晴れ渡っている。


 荒れ果てた廃旅館の中庭で、達彦はテディベアを抱き締めながらただただ呆然と立ち尽くしていた。 


「これでもう大丈夫だ。ほら水飲め。何があったか話せるか?」


 管理人はニッと笑いながらペットボトルの水を達彦に投げて渡す。

 達彦は慌ててそれを受け取ったが、手に力が入らずキャップが開けられない。

 仕方ねぇな、と笑いながら管理人が開けてくれたので勢いよく飲むと、喉に冷たい水が流れてようやくスッキリした。

 そうして今あった出来事をひとつひとつ話していく内に、手の震えも治まっていた。


「なるほどな。……姉ちゃんたちはどうだった」

「いえ、誰もいませんでした……」

「……そうか」


 最後まで話しきると、管理人は一つ質問を投げかけたがそれ以上は何も聞いてこなかった。

 それが達彦にはとてもありがたかった。


「そのくま、すげぇ代物だ。ずっと大事にしろよ。もし繕うならばあちゃんが使ってた道具を使え。そんで効力は保つさ」


 腰に手を当て、うーんと伸びをした管理人は達彦の持つテディベアを指差しながら助言をしてくれる。

 祠に影を封印したことといい、やはり只者ではないと思ったが、達彦もあえて深く聞くつもりはなかった。


「ありがとうございました。それと、すみませんでした。姉が祠を壊して」

「できた弟だな。まぁ、気にすんな。ほら、もうここには来んなよ。暗くなる前に帰れ」


 懐からたばこを取り出し、口にくわえてそう告げた管理人に一度深々と頭を下げた達彦は、晴れ晴れしい表情で廃旅館を後にする。


 家に帰ったら、一度テディベアを綺麗にしてやろうと心に決めて。


 ◆


 あの日。

 オミナスチャンネルのメンバーは二階の例の部屋で黒い門を見た。


「ぇ……ひっ」

「なにあれ……」

「おかしいよ、こんなの」

「ぅわ……」


 カメラマンの須田が室内を映そうとドアの前に来た時、四人は全員まるで金縛りにでもあったかのように動けなくなってしまった。


 呆然としている間に、黒い門から影が勢いよく伸びてくる。

 誰も叫び声すら上げられぬまま、四人は影に捕まり黒い門の奥へと引き摺り込まれていく。


 それは、ほんの一瞬の出来事だった。


 門の奥へ引き摺り込まれた拍子に、須田の手からはカメラが、南の手からはテディベアが落ちたが、それもすぐに影に呑み込まれてしまった。


(あ、れ……? あたし、どうしたんだっけ……?)


 暗く、ねっとりとした空気を感じながら南は目を覚ます。

 周囲を見渡すと、美しかった時代の旅館の和室があった。


 しかし何かがおかしい。全てに色がないのだ。

 それに、まるで夢の中にいる時のように身体がうまく動かせなかった。


「何、これ」


 慌てて立ち上がり、周囲を見渡すが誰もいない。


 ──いや、なにかがいる。


 人の形をした真っ黒な影。それらがうごめいては呻き声を上げていた。


「い、いやぁぁぁぁっ! 誰かっ、なかちー! 岡っち! 須田ちゃんっ! いないの!?」


 黒い影から逃れるように南は走った。しかしどこまで行っても出口がない。


「なんでよ、なんでよぉ! あっ、テディベア! テディベアがある!」


 南は床に落ちていたテディベアを拾うとギュッと胸に抱きしめた。

 これに不思議な力があるのはわかっていた。弟の大事なものだということも。


 だが、南は弟が笑っているのが許せなかった。

 昔からおどおどしている弟が気に食わなかったのだ。

 両親だって、できの悪い弟を無視しているのだ。自分だって虐めていいはず。


 それなのに、祖母だけは達彦のことをかわいがった。姉である自分を差し置いて。


「おばあちゃんの変な力が込められてるテディベアさえあれば、きっと助かるはず……あれっ? 誰か来……うわ、ちょっと! 眩しいからそれやめて!!」


 部屋に誰かが入ってきた気がして顔を向けると、その瞬間とんでもなく眩しい光を感じて目を瞑る。

 ふっと光が下がったのを感じて恐る恐る目を開けると、そこには見慣れた人物が立っていた。


「えっ、達彦? 嘘、意気地なしのくせに助けに来たのね!? ほら、ここよ! 達彦っ、あたしはここ!」

『っ、ひゅっ……か、ひゅ……っ』

「なによ、情けない声出して。さっさとあたしを助けなさいよぉぉぉぉっ!!」

『うあ、ああああああっ……!!』

「ちょ、やめ……痛い、痛っ……がはっ」


 ぶんぶんとまるで鈍器のような懐中電灯を振り回す達彦。

 そのせいで南は頭や頬、身体をぼこぼこに殴られてしまった。

 血を吐き、あちらこちらの骨も折れた。

 

 テディベアも落としてしまい、南が苦しんでいる内にどうやら達彦が拾ってしまったようだった。


(許せない、達彦のくせに。殺してやる……殺してやるっ!!)


 怒りに我を忘れ、南の体は影に覆われていく。

 原型をなくし、どろりとした黒い影に。


「たつ、ひ……こおおおおおおおおおっ……!!!!」

『うあ、ああああああっ……!!』

「ぁ……え、なんで? なんか、引っ張られ……」


 ずるずると何かに吸い込まれていく感覚が南を襲う。

 ちらりと引っ張られる方に目を向けると、怨嗟の声を上げながら黒い手を伸ばしてくる仲間たちが目に入る。


 しかし、彼らには目がなかった。

 目が合った部分は虚ろになっており、まるで自分たちが引き摺り込まれた門の奥の闇と同じだ。


「ひっ……! 岡っち、なかちー……須田ちゃんまで!」


 すでに彼らに自我は残っていないようで、まるでゾンビのようにこちらに手を伸ばしてくる。

 ぞわっと全身に鳥肌がたつ。

 慌てて逃げようとしたが成す術なく、南は三人に足を掴まれた。

 引っ張られるスピードがぐんと速くなる。


「いやっ、いやぁ! あたしはあんな風になりたくない! 達彦! お願い、置いていかないで! 謝るっ、これまでのこと謝るからぁ……!!」


 必死でもがき、光の方へ手を伸ばすもすでに遅い。

 テディベアを抱き締めて立ち尽くす弟は、決して救いの手を伸ばそうとはしなかった。


「いやだっ、いやぁ! あたしだけは助けて! 帰りたいっ! 帰」 


 ややあって、黒い門は消え去った。

 祠に牛頭馬頭の像が戻り、再封印がなされたためだろう。


 ◆


 廃旅館の二階、例の部屋に管理人が一人やってくる。

 煙草をくわえ、煙を燻らせながら目を細めて呟いた。


「……ま、事実は知らねぇほうがいいこともある。あの坊主は賢かったな」


 管理人は一気に煙を口から吐き出した。

 その煙はどんどん広がっていき、廃旅館全体に行き渡るほどだ。


 気づけば、管理人の姿も消えていた。


 充満していた腐敗臭はすでになく、後には仄かに線香の香りだけが残っていた。



 ======


お読みいただきありがとうございました。


ここからは蛇足。

これがホラーゲームだったら、これはきっとグッドエンド。

牛頭馬頭像や管理人の秘密、姉の真相なども全てひっくるめて達彦が知るルートがきっとトゥルーエンドってやつですね!


それからなんでも、腐敗臭や蜘蛛の巣に引っかかった感覚がある時は、近くに霊がいる時と言われているんですって。こわいね。

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影は祠へ、僕はテディベアを抱く 阿井 りいあ @airia

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