第5話 舞台裏での機ぐるみ 4

陽子は事務所に戻ると、パソコンを開いて何か良い方法がないか検索を始めた。


そんなネットの中では、すでにロボット博のガンダムが話題になっていた。

イベントではほとんど動きもなく立っているだけだったガンダム。


入退場の動きとわずかな時間であったが屋外へ行く際に会場を横切る姿を見て、ガンダムの中身は女性ではないかという論争がされ始めていた。

当然のように会場を横切った際の動画は投稿サイトにアップされていた。




そんな事とは夢にも思わなかった陽子。

しかし、今はなんとかして真希をガンダムから解放する方法を必死に探した。


「あった!」

周りで仕事をしている人が驚くほどの大きな声を上げた陽子はすぐに事務所を飛び出していった。


向かった先は百貨店に常駐している設備会社の事務所。

陽子は事の経緯を説明すると、設備会社の人は快く協力を引き受けてくれた。


早速、ガンダムの中に閉じ込められている真希の元へと向かう。




陽子と設備会社の人が到着すると、すぐに作業に入る。

設備会社の人の手には電動ドリル。

ドリルでネジの頭を無くして外す方法を陽子は検索で見つけた。


ガンダムを立たせて、ネジの頭を順番に削っていく。

そして、ようやくボディのパーツが外れた。


設備の人は「コレでいいのかな?」と。

それに対して陽子は少し涙目で「はい、ありがとうございます」と設備会社の人に何度もお礼を言っていた。


ボディのパーツは外す事ができたが、他のパーツを外すのに必要な電動ドライバーがないので、ボディのパーツを再び重ね合わせ、透明な梱包テープで簡単に固定し、控え室へ戻る。


また、イベント会場を横切ることになったが、イベントが終わってから時間が経っていたので、ほとんど人はいなかった。



その後、控え室で真希はガンダムとアンドロイドの二重の機ぐるみから無事に解放された。

修理が必要になったガンダムのボディのパーツを前にして陽子は愕然としていた。


そんな陽子の耳に真希の呟いた「楽しかった」という言葉は届いていなかった。




ガンダムのボディパーツの修理には1週間の時間を要した。

その間に直樹のインフルエンザも完治し復帰した。


しかし、ガンダムの中身が女性という情報が広がり、ガンダム見たさに多くのお客さんが詰めかけたが、イベントがしばらく中止となったため、陽子は対応に追われた。


ガンダムイベントの代わりに、アンドロイドの予備品に手を加えて、美樹も小さなアンドロイドとなり2体のアンドロイドでロボット博イベントを盛り上げた。



真希はというと、2週間のロボット博後も、アンドロイドとガンダムに閉じ込められたあの圧迫感が忘れられずに今ではウルトラマンの着ぐるみに入っているとか、いないとか。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

機ぐるみ ごむらば @nsd326

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る