第4話 舞台裏での機ぐるみ 3

陽子が真希に確約したようにガンダムイベントではワンポーズだけで無事に終える事ができた。

無事に終えたのはイベントだけ、控え室に戻ってきた真希を不幸が襲う。


ガンダムのボディを止めているネジがどれも変に取り付けられていて外せなくなっていた。

腕や足などの他のパーツなら、まだ良かったのだが、真希はアンドロイドとガンダムの機ぐるみ、さらにはガンダムのインナースーツとしてウエットスーツまで着て閉じ込められてしまった。


原因はアンドロイドの大きな胸とお尻、確かに男の直樹にはない。

それと電動ドライバーの扱いに不慣れな陽子が胸やお尻の出っ張りがあるため、ガンダムのパーツが密着できていない状態で強引にネジ止めしてしまった事にある。


機ぐるみから解放されず、長時間の機ぐるみ着用から長椅子に腰掛けて項垂れる真希。


ガンダムの顔部に開けられた穴からは真希の汗が流れ出る。

その姿はあたかもガンダムが涙を流しているように見えた。

いや、この涙は機ぐるみを重ね着させられた上、脱げなくされた真希の本当の涙だったかも知れない。


どうにかしてガンダムのボディのパーツを止めているネジを外すため、陽子は男性従業員を連れてきたのだがこれが裏目に出る。

力任せにネジを回してしまったため、ネジ山が潰れてしまい、完全に手立てを失ってしまった。


陽子はせめて頭部だけでも外せないかと頑張ってみたが、ガンダムの頭部のパーツに僅かな隙間は出来たが、取り外せるものではなかった。



陽子が項垂れる真希に声をかける。

「真希ちゃん、大丈夫?」


「あのー、控え室でいると暑くなってきたので屋外へ連れ出してもらえませんか?」


「分かったわ!」

陽子は力強く返事をする。

自分のミスで真希に後ろめたい気持ちがあったから。

陽子と男性従業員はガンダムの両側に分かれて、肩を貸すようにしてガンダムを立たせる。

そして、控え室を出て少しイベント会場を通りバックヤードを抜け、従業員の喫煙スペースでもある屋外スペースへガンダムから出られない真希を連れてきた。


美樹もロングダウンを羽織り、折り畳み式の長椅子を持って後をついてきていた。


長椅子に真希を座らせ、僅かに開く頭部から陽子が声を掛ける。

「どう?大丈夫?」


中からはくぐもっているが、先ほどより明らかに元気な感じの声が返ってくる。

「はい、しばらくココで休んでてもいいですか?」


陽子は「もちろん!」と返事をし、美樹に真希の側についてもらうようにお願いし、事務所へと戻っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る