おかしなハロウィン(季節の便り~12ケ月/10月・SS・童話)
源公子
第1話 おかしなハロウィン
「
そろそろ夕暮れ。緑マンション子供会のみんなは、今年も子供会から支給されたかわいいお揃いのカボチャのお菓子入れを下げて、家々を回ります。
このカボチャが、この町の子供の目印。カボチャを持っている子だけがお菓子をもらえるのです。
「はい、これでおしまい」
お菓子をもらえる家の地図を確認して、子供会長の隆くんが言いました。
「チロルチョコたくさんもらったよ」
「オレオもある」
「終わったらカボチャの入れ物、子供会に返さないと。来年も使うから」
「もらっちゃっだめなの?かわいいのに」
「僕、オレオもっとほしい。誰かグミと取り替えて」
「良いよー」
隆くんが、カボチャの入れ物の蓋をとると、中は空っぽです。
お菓子がぎっしり入ってたはずなのに!
「あゝ、私のも!」
「オレのも!」
みんな空っぽ。お菓子がなくなっています!
途端にカボチャはみんなの手を離れ、ごろごろ転がって逃げ出しました。
「待てー!」
みんなで追いかけます、すごい速さです。
カボチャは、街の中心にある小学校へと転がっていきます。
子供たちが息を切らして追いかけていくと、街のあらゆる方向から、ごろごろカボチャと、それを追いかける子供たちが集まってきていました。
転がってきたカボチャ、真ん中で合体!
体育館より大きいお化けかぼちゃになって、ニタニタ笑っています。
「カボチャのお化け、お菓子を返せー!」
隆くんが叫びます。
「お菓子は全部もらったぞ。いつも入れられるだけで、俺は一個ももらえない。だから、今年は俺が独り占めだー」
カボチャは、自分だけお菓子をもらえなくてずっと不満だったようです。
それでいたずらをしたのです。
これではお菓子を返してもらえそうもありません、どうしましょう。
その時一人の魔法使いの格好をしたおばさんが進み出て、杖を一振りしました。
「ぎゃああああー!」
大カボチャは、雷に打たれてバラバラになり、お菓子を吐き出して元に戻ります。
「全く何をやっているの。カボチャはカボチャの仕事をしなさい」
そういうとおばさんは、かぼちゃを1つ拾うと行ってしまいました。
子供たちが、わっと叫んでお菓子を拾いに駆け出します。
「みんな入れ物一杯だけだよ。それ以上は取らないでー!」
隆くんが叫び、みんなルールを守ってくれたようです。
やれやれ。
◇
「それにしても、あのおばさん誰だったんだろうねぇ。シロ」
次の日グミを食べながら、隆くんは子猫のシロに話しかけます。
みんなに聞いても誰も知らないというのです。
「あのカボチャ何使うんだろう。死んだおばあちゃんなら、冬至の日にカボチャのお団子にしてお汁粉に入れてくれたけど、外国の人みたいだったから、カボチャのパイにするのかな」
その時、ニュースの映像で、昨日のニューヨークのハロウィンの映像が流れました。
吸血鬼やら、ゾンビやら、骸骨やら。エルフや赤ずきんちゃんもいます。
シンデレラのカボチャの馬車もやってきました。
でもその馬車の後には、昨日のかぼちゃのニタニタ笑いがくっついていたのです!
側を歩いていた魔法使いのおばさんが、こっちを見てにっこり笑いました。
カボチャは、ちゃんとカボチャの仕事をしたようです。
おかしなハロウィン(季節の便り~12ケ月/10月・SS・童話) 源公子 @kim-heki13
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます