5時50分
白川津 中々
◾️
目覚ましより早く起きたのは尿意のせいだった。
スマフォのディスプレイで時間を確認。5時50分。なんともいえないタイミングに滅入る。二度寝するには遅いしおはようには早い。いや、このまま起き上がってトイレに行き支度を済ませて早めの出勤早朝残業お疲れ様ですと勤労万歳な精神で仕事に取り掛かった方が得策というのは分かりきっているが瞼は「まだ開く時間じゃない」と訴えてきているのだ。人肌の布団は心地よく、もじもじしているだけでも至福。このまま目を閉じて暗闇の中を遊泳したい。だが、膀胱。時間経過とともに強烈に意識させられる貯水状況が微睡に水を差す。絶対に絶対に絶対に鷹を狩りに行った方がいいのに、お布団君が離さない。俺にもっと精神的なパワーがあればさっさと温もりから決別できるというのに。あぁ、なんと無力なんだ、立ち上がる事もできないなんて。いやこれは完全に膀胱君が悪い。なぜ我慢できないのだ。これは看過できない。今後おむつの着用も慎重に検討しなくてはならないだろう。今から慣れておけば老後も安泰だ。いつでも要介護老人として生きていける。将来安泰だぞはっはっは。
……起きよう。
朝一人、早めに起きてようやく用を足し気怠く準備を整える。朝食は焼いてない食パンとインスタントのコーヒー。いつもの不味さ。昇る朝日が静寂な街を照らす中で俺は疲れ切った体をソファに預ける。やはりまだ眠い。休もうかなぁなんて考えるも実際にそんな真似はしないしオムツも買わない。俺の人生なんてのは、そんなもんだ。
5時50分 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます