海の上の結婚式

有栖川 櫂

ㅤㅤ

 音楽サイトで白い曲を 、バックグラウンド再生しながら ベットに仰向けになる 。ちょうど時刻は二時 。寝ないといけないのは分かっているけれど 眠れないのだから仕方がない 。

 暫く寝返りをうちつづけていると 小さくスマホが振動した 。メッセージ着信の通知だった 。彼女から 。


 電源を切ったらバックグラウンド再生が止まってしまうため 、メッセージ画面を起動したまま スマホをポケットに入れた 。

 底がすり減ったサンダルを履いて ゆっくり歩きながら近くの海に向かった 。彼女はもうついていて 、死んでいるように砂浜に寝っ転がっていた 。


 「ぉす」

 「おーっす」


 平成のヤンキーのような汚い挨拶をして彼女の隣に寝っ転がった 。何を話せばいいか分からなくて 、これからどうしようね 、とか そもそもこれからなんてあるのかな 、なんて哲学的(悪く言えばポエミー)な話をした 。

 ふと 、あくびが出た 。


 「ねむい?」


 うん 、と言ったつもりだったけど 声が出なくて 「ん」としか返せなかった 。


 「じゃあそろそろ行こっか」


 また「ん」と返すして彼女の手を取った 。まだその手は少しあったかい 。

 つま先からどんどん冷たい感かくがしみこんでくる 。寒くてかの女の指に自分の指をからめた 。少し力をこめると小さく力が返ってくる 。


 「病める時も健やかなる時も」

 「世間がわたしをこばんでも、人を殺しても、悪口言われても」


 ふるえる声で とつぜん言い出した 。


 「わたしを愛してくれますか」

 「  次第」


 そういうと  はちいさなこえで「 らしいね」ってわらった 。さむくてさむい 。からだがしずむのをかんじながら 、さむくて  とだきしめあった 。もうあったかくない 。つめたい 。さむい くるしいすきだいすきだいすきすき  すき いっしょ だいすき

 

 

     ㅤㅤ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海の上の結婚式 有栖川 櫂 @Ningen_62

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ