第3話

「黒丸」

二股に分かれた尾を揺らしながら肩に乗ってきた黒猫に呼びかける。


この世界ではこの世に生を受けた瞬間から何かしらの神の祝福を受ける。


この国では様々な姿かたちをした八百万の神と呼ばれる摩訶不思議な存在が生涯傍にいて、特別な力を与えてくれる。


ゲームを終えたばかりの俺は余りのゲームのひどさに興奮冷めやらぬ勢いでまくしたてる。


「いやいや、これが結構面白いんだ。スキルも魔法もないから、自分の得意なことが何なのか全く分からない。努力を重ねてもどこまで成長できるか分からず、常に不安を抱えながら生きる感じがリアルすぎる。そして、火を起こすにも水を得るにも、全てが魔法抜きの手作業だ。そういう不自由さが逆に楽しいんだ!」

「今回はナイトメアモードでプレイしてみたんだが、これが本当にひどい。自分の能力を試されるというより、理不尽さに耐えるゲームだよ。能力がさほど高いとも思えない上司が、自分は何もしないくせに、ひたすら文句ばかり。『足りぬ足りぬは工夫が足りぬ』とか言ってきやがって、そのたびに胃がキリキリしてたよ。あの上司を見ていると、本当に何が足りないのか、どんどん自信がなくなってくる。足りねーのはテメーの頭だっての‼」


バリッ


黒丸に顔面を引っかかれる。 「うるさい、長い、気持ち悪い」 睨みつけるように細くとがった瞳で冷たく吐き捨てられる。


「そんなことより、今夜は仕事があるんじゃなかったの?」


そう言われ、痛みをこらえながら時計を確認する。 「おっ!ちょうどいい時間にゲームが終わったんだな。今日の巡回任務、また街の変わり者が何かやらかしてないといいんだが……」


俺が所属しているのは、この国の治安を維持するための組織「神護局(しんごきょく)」だ。八百万の神々の名のもとに、街の平和を守ることが俺たちの役目だ。といっても、神の力を借りることはほとんどなく、実際には我々が「人間の手」で問題を解決するのが常だ。


「じゃあ、用意をして仕事に行くか」


素早く用意をして仕事に出かけた。

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酔っぱらいの戯言 @genin_syosetu

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